Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 127

ページ: 127

翻刻

して。拾(ひろ)ひし金子(かね)を戻(もど)したるに。彼(かの)傳蔵(てんざう)は某(それがし)が。厚意(かうい)を深(ふか)く謝(じや)し了(おは)り。 扨(さて)いふやう。我(われ)今朝(こんてう)職業(せうばい)の取引(とりひき)にて。金子(かね)を懐中(ふところに)して西(にし)の郷(かう)まで 行(ゆ)く序(ついで)。従来(じうらい)の得意(とくい)へ立寄(たちより)しが。折節(をりふし)主人(あるし)独杓(どくしやく)にて。酒(さけ)打飲(うちのみ)たる所 とて。能(よく)こそ来(きた)れり敢々(いざ〳〵)と。勧(すゝ)めの随々(まに〳〵)数盃(すはい)を傾(かたふ)け。軈(やが)て其家(そのや)を出(いで) けるに。いか計(ばかりか)過酒(すご)しけん。十二分(しうにぶん)の酔(ゑい)を発(はつ)し。志方(こゝろさすかた)へは行(ゆき)がたく。漸々(やう〳〵)にして 帰宅(きたく)せしに。其折(そのをり)から落(おと)したる処(ところ)也。是(これ)我(われ)大切(たいせつ)なる国宝(しな)を携(たづさ)へながら。 過酒(くはしゆ)して前後(ぜんご)を弁(わきま)へざりしは。天(てん)われを懲(こら)し戒(いまし)め給ふ処(ところ)にて。落(おと)せし 金子(きんす)我(わが)ものならず。往来(ゆきゝ)許多(あまた)の大道(だいどう)にて。御身(おんみ)の手(て)に拾(ひろ)ひ給ふは。所謂(いはゆる) 天(てん)の与(あた)ふ処(ところ)にて。既(すで)に御身(おんみ)の至宝(たから)也。しかるを態々(わざ〳〵)持来(もちきた)り給ふ。其(その)老実(らうじつ) は感(かん)ずるに余(あま)りあれど。我(わが)所得(もの)とはなしがたしと。彼(かの)財布(さいふ)をおし戻(もど)せり。 某(それがし)が申は。是(こ)は理(り)に似(に)たるの非(あやまり)なり。其所以(そのわけ)は。天(てん)御身(おんみ)が酒癖(しゆへき)を懲(こら)さん が為(ため)に。至宝(たいせつ)の金(かね)を失(うしなは)しめ給ふ。しかれども我(われ)これを拾(ひろ)ひて帰(かへ)し来(きたる)