Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 128

ページ: 128

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事は。天(てん)われをして。御身(おんみ)に返(かへ)さしむるならん。天(てん)に順(したが)ふものは存(そん)し天(てん)に 逆(さか)ふものは亡(ほろ)ぶとかいふ事(こと)を聞(きけ)り。不如(しかず)納(をさ)め給へと勧(すゝ)めしかば。傳蔵(でんさう)申は陳(ちん) 文漢語(ふんかん)はわれば知らず。御身(おんみの)拾(ひろ)ひし上(うへ)は御身(おんみ)の物(もの)。我(われ)故(ゆへ)なふして取(と)る 理(り)あらんやと承引(せういん)せず私(わたく)【わたくしヵ】思ふは。所詮(しよせん)論(ろん)は無益(むやく)なりと。彼財布(かのさいふ)を傳蔵(でんざう)の 膝下(まへ)に置(お)き。身(み)を翻(ひるがへ)して走(はし)り出(いで)。漸(やう〳〵)私宅(したく)に帰(かへ)る家辺(かとべ)にて。傳蔵(でんざう)私(わたくし) が跡(あと)を追来(おひきた)りて。此財布(このさいふ)を。無体(むたい)にわが懐中(ふところ)へ押入(おしいれ)んとするを。取(と)らじ と争(あらそ)ひ。隙(ひま)得(え)て。家(いへ)に入(いり)門戸(かど)を引(ひき)たて内(うち)に入(いれ)ざりしかば。門辺(かとべ)にて何(なに)か 独言(ひとりこと)をいひて帰(かへ)りしかど。其侭(そのまゝ)門戸(もんこ)を〆切(しめきり)て臥(ふし)たる迄(まで)にて。其後(そのご)の事は 更(さら)に存(そん)せず候。察(さつ)する処(ところ)。猶(なほ)も己(おのれ)に与(あた)へんとて。軒(のき)に置(おき)たるにや候(さふらは)んと一伍(いちふ) 一什(しじう)恐(おそ)る〳〵言上(ごんぜう)せしかば。時頼/殆(ほとん)ど感(かん)じ給ひ。尋常(よのつね)ならぬ両人(ふたり)の 潔白(けつはく)。さらは明日(めうにち)早天(さうてん)荘官(せうや)召(めし)つれ。評定所(ひやうでうしよ)にいたるべし。かの傳蔵(でんさう)を 召出(めしいで)し。汝(なんぢ)が本意(ほんい)のごとく戻(もど)し遣(つか)はさん。夫(それ)までは汝(なんぢ)預(あづか)り置(おく)べしと宣(のたま)ふ。