Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 160

ページ: 160

翻刻

たる饗応(けうわう)なし。抑(そも)この婦人(ふじん)は何人(なんびと)ぞ。藤五郎(とうころう)は微笑(ひせう)して。是(こ)は己(おの)が 家室(かしつ)の姪(めい)なるが。都(みやこ)より来(きた)つて某(それがし)に憑(より)て。良家(れうか)に宮仕(みやづかへ)せん事をもとむ。 貴殿(きでん)卑(いや)しきを忍(しの)ひ給はゞ。薪水(しんすい)の助(たすけ)をなさしめんはいかに。伊沢(いざは)満面(まんめん)に笑(ゑみ) を含(ふく)み。謙退(けんたい)の問答(もんだう)無益(むやく)なれば。希(こひねがは)くは請得(こひえ)て帰(かへ)らん。藤五郎も喜(よろ) 雀(こび)の顔色(がんしよく)にて。貴殿(きでん)実(じつ)に召仕(めしつか)はんとならば。これに過(すぎ)たる幸(さいはひ)なし左(さ)らはその 由(よし)家室(つま)にいひ聞(きか)せんと。其坐(そのざ)を立(たつ)に伊沢(いざは)五郎。是非(ぜび)をもいはず女(をんな)か手(て)を 取(と)り。さま〴〵に戯(たはふれ)をなす。彼女(かのをんな)うち笑(ゑ)みつゝ。静(しづか)に伊沢(いざは)を座(ざ)に居(お)らしめ。まづ其(その) 厚情(かうじやう)を謝(じや)しさていへるは。有難(ありがた)き君(きみ)が言葉(ことば)は。いか計(ばかり)かは嬉(うれ)しけれど。恐(おそ)らくは 酒興(しゆけう)にて。醒(さめ)ての後(のち)は棄(すて)給はん。伊沢(いざは)目(め)を細(ほそ)ふし唾(つ)を飲(のみ)て。汝(なんぢ)奚(なん)ぞ。我(われ)を 疑(うたが)ふや。我(われ)誓(ちか)つて終身(しうしん)を供(とも)にせん。われ今(いま)こそ斯(かく)痩禄(やせぜたい)なれど。早(はや)からは 三十日(さんじうにち)遅(おそ)かりとも半年(はんねん)のうち。武勇(ふゆう)を天下(てんか)に耀(かゝやか)し。諸侯(しよこう)の列(れつ)に加(くは)はるべし。 しかれば供(とも)に栄花(ゑいぐは)の床(とこ)に。比翼(ひよく)を契(ちき)らんは楽(たの)しからずや。彼女(かのをんな)は頭(かしら)を