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奈何(いか)にも大人気無(おとなげな)けれ共。六郎助(ろくろすけ)を切(きつ)たる此刀(このかたな)にて。同(おな)じく汝(なんぢ)も此世(このよ)の
いとま。今(いま)とらせんと抜手(ぬくて)を見(み)せず。只(たゞ)一討(ひとうち)と斬(きり)かゝるを。左(さ)知(しつ)たるはと小次郎
が。飛蝶(ひてう)の如(ごと)く飛(とび)しざり。互(たがひ)に窺(うかゞ)ふ虚々実々(きよ〳〵じつ〳〵)。打(うで)は披(ひら)きひらけは附入(つけいり)。
千変万化(せんへんばんくわ)と切結(きりむす)ぶ。元来(ぐはんらい)土民(どみん)の小童(こわつは)。一(ひと)たまりも有(ある)まじと。衆人(しゆしん)これ
を憐(あはれ)む処(ところ)に。何処(いづこ)にて修錬(しゆれん)せしにや。中々(なか〳〵)尖(するど)き錬磨(れんま)の切先(きつさき)。彦(ひこ)次郎
も心中(しんちう)に驚(おどろ)き。精神(せいしん)を励(はけま)し戦(たゝか)ひしが。大蔵(だいざう)は聞(きこ)ゆる手錬(しゆれん)。良(やゝ)もすれば
小次郎は。請太刀(うけだち)になりて危(あや)ぶかりしかば。数万人(すまんにん)見物(けんぶつ)手(て)に汗(あせ)をにぎり。
息(いき)をつめたる形容(ありさま)は。唯(たゞ)無人城(むにんぜう)に異(こと)ならざりしが。彦(ひこ)次郎いらつて
畳(たゝみ)かけ。打込(うちこむ)太刀(たち)を小次郎は。何(なに)とか做(し)けん請損(うけそん)じ。左(ひだり)の肩(かた)さき切(きり)こまれ。
ひるむ処(ところ)を飛(とび)かゝり。切伏(きりふせ)んとする処(ところ)に。奉行(ぶぎやう)金沢前司(かなざはぜんじ)。走(はし)りかゝりて
大蔵(たいざう)を聢(しか)と抱(いだ)き。上意(ぜうい)なり暫(しばら)く待(まつ)てと。彦(ひこ)次郎が刃(やいば)を止(とゞ)む。此隙(このひま)に
本外(ほんがい)。の医者(ゐしや)立(たち)より。小次郎が疵口(きずぐち)を療(りよ)じ。薬湯(やくとう)を与(あた)ふ。金沢前司(かなざはぜんじ)は