Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 192

ページ: 192

翻刻

彦次郎に向(むか)ひ。驚(おどろ)き入(いり)たる其許(なんぢ)の手錬(しゆれん)。中々(なか〳〵)小腕(こうで)の及(およ)ぶ処(ところ)ならず と。一向(ひたすら)に称嘆(せうたん)し。扨(さて)重(かさね)ての上意(せうい)には。百姓(ひやくせう)小次郎が健気(けなけ)の願(ねが)ひ黙(もだ) 止(し)がたく。父(ちゝ)の敵討(かたきうち)申/付(つけ)しに。既(すで)に小次郎/疵(きず)を蒙蒙(かふむ)る。こを以(もつ)て勝負(せうぶ)正(まさ)に 顕然(げんぜん)として。敵討(かたきうち)の旨趣(しゆい)は済(すみ)たり。しかるに嶌田(しまだ)大蔵。旧名(きうめい)大村(おほむら)彦次郎。 元来(くはんらい)武家(ぶけ)に奉公(ほうこう)し。士分(しぶん)の連(れつ)に有(あり)ながら。夫(をつと)ある土民(どみん)の妻(つま)を恋慕(れんぼ)なし。 したがはざるを遺恨(ゐこん)とし。罪(つみ)なき夫(おつと)六郎助(ろくろすけ)を殺害(せつがい)し。国遠(こくゑん)せし罪(つみ)。逃(のが)れ がたし。仍(よつ)て改(あらた)め縛首(しはりくび)申/付(つくる)処(ところ)と。述(のぶ)る詞(ことば)の下(した)よりも。捷卒等(あしがるら)ばら〳〵と折重(をりかさな)り。 彦(ひこ)次郎を搦(から)め取(と)り。直(たゞち)に北面(ほくめん)に引居(ひきすへ)たり。彦次郎(ひこじろう)は夢見(ゆめみ)し心地(こゝち)に て。一言(いちげん)の詞(ことば)もなく。只(たゞ)虚路(うろ)〳〵と四方(しほう)を見(み)いたる。前司(ぜんじ)又(また)小次郎にむかひ。時(とき) 頼君(よりくん)の仰(おほせ)たしかに聞(き)け。汝(なんぢ)が切(せつ)なる志(こゝろざし)を感(かん)じ給ひ。願(ねが)ひのごとく敵打(かたきうち)を免(ゆる)し 給へども。元(もと)国法(こくほう)を犯(おか)せし罪人(つみんと)なれば。斯(かく)搦取(からめとつ)て大法(たいほう)に行(おこな)ふ処(ところ)なり。尤(もつとも) 思召処(おほめすところ)ありて。彦次郎が太刀取(たちどり)を。汝(なんぢ)に命(めい)じ給ふ間(あいだ)。心静(こゝろしづ)かに宿志(しゆくし)を