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遂(とげ)よと相述(あいのぶ)るに。小次郎は勇(いさ)み立(たち)。大蔵(だいさう)が太刀取(たちどり)を。私(わたくし)に仕(つかまつ)れとや重(じう)
重(じう)難有(ありがた)き御仁慈(ごしんじ)。肝(きも)に銘(めい)じて忘(わすれ)がたしと。身(み)の痛手(いたで)をも打忘(うちはす)れ。踊(おど)り
上(あが)りていかに彦次郎。今日(こんにち)こそ復(かへ)す父(ちゝ)の仇。おもひ知(し)れよといふかと思(おも)へば
彦(ひこ)次郎が首(くび)は前(まへ)にぞ落(おち)たりけり。前司(せんじ)小次郎を打扇(うちあふ)ぎ。首尾(しゆび)よく復讐(ふくしう)仕(し)
課(おふ)せて。左(さ)こそ本懐(ほんぐはい)なるべしと。称(せう)する声(こへ)と諸(もろ)ともに。数万(すまん)の見物一同(けんふついちど)に
あゝ斬(きつ)たりや。討(うつ)たりやと。褒(ほめ)るもあれば。時頼(ときより)が仁慈(しんじ)の計(はからい)を感(かん)ずる声(こへ)も。
広(びろ)き浜辺(はまべ)も動揺(どうよう)せり。斯(かく)て金沢前司(かなさばぜんじ)。津国(つのくに)より召登(めしのぼ)せたる輩(ともがら)に。
彦次郎が首級(くび)。ならびに旧悪(きうあく)を記(しるし)たる板札(ふだ)を渡(わた)し。津国(つのくに)にて梟木(ごくもん)
に掛(かけ)させ。人心(ひとごゝろ)を懲(こらさ)しめ。小次郎は客舎(きやくや)に於(おゐ)て。疵(きづ)平癒(へいゆ)をなさしむ。
後日(ごじつ)本快(ほんくはい)の節(とき)時頼(ときより)小次郎を召出(めしいだ)させ。本国(ほんごく)へ送(おく)り遣(つかは)すべき哉(や)と
尋(たづね)給ふに。小次郎/謹(つゝしん)で。此(この)始末(しまつ)ども厚(あつ)き執権(しつけん)の仁愛(にんあい)を謝(しや)し奉(たてまつ)り。
私義(わたくしぎ)。幼(おさな)くして父(ちゝ)を失(うしな)ひ。又/若冠(とりわか)【としわかヵ】にして母(はゝ)に別(わか)れ。今(いま)は孤独(こどく)の身(み)に