Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 212

ページ: 212

翻刻

追善(つひせん)なれ。実(げ)に彼(かれ)か申すごとく。近頃(ちかごろ)の仏事(ふつじ)といへば。重職(ぢうしよく)頭人(とうにん)評定(へうでう)の末(ばつ) 子(し)。或(あるひ)は親族(しんぞく)有/縁(ゑん)の僧徒(さうど)のみにて。元(もと)より財宝(ざいはう)に不足(ふそく)有(ある)べしとは 覚(おほ)えざれども。学徳(がくとく)道行(だうこう)の聞(きこ)え有(ある)ことなく。高(たかき)に土(つち)かふ謗(そしり)。遁(のが)るゝ処(ところ)なし。 これ全(まつた)く将軍(しやうぐん)の知(しろ)し召(めす)処(ところ)ならで。皆(みな)我(わが)誤(あやまり)なり。抑(そも〳〵)藤綱(ふぢつな)が心中(しんちう)一(いつ)もつて これを貫(つらぬ)く。奥床(おくゆか)しく末頼(すゑたの)もし。急(いそ)ぎ其者(そのもの)を召(めす)べしと有(あり)しかば。信濃(しなの) 入道(にうだう)使(つかひ)を走(はせ)て。北條(ほうてう)が館(たち)に招(まね)く。青砥藤綱(あをとふちつな)不図(おもひよらざる)使節(ししや)を受(うけ)て。 心中(しんちう)不測(ふしぎ)ながら。北條(ほうてう)にいたり。時頼(ときより)に謁(ゑつ)す。入道(にうたう)莞爾(くはんじ)として汝(なんぢ)藤(ふぢ) 綱(つな)と名乗(なのる)は。左衛門(さゑもん)尉/藤満(ふぢみつ)が庶子(しよし)ならんか。何(なに)が故(ゆゑ)に民間(みんかん)に碌々(ろく〳〵)たるや。 藤綱(ふぢつな)謹(つゝしん)で。尊命(そんめい)のごとく藤満(ふぢみつ)が末子(ばつし)たりといへども領(りう)【「領」は「頒(わか)」ヵ】つべき庄里(せうゑん)とも 有(あら)ざれはとて。幼(いとけな)きより梵刹(せんでら)に登(のぼ)せて桑門(しゆつけ)たらしむ。勤学(きんがく)する事(こと)已(すでに) に十余年(しうよねん)。然(しか)れども愚(おろか)にして其要(そのよう)を極(きわ)めず。故(かるがゆゑ)にや仏門(ぶつもん)の大綱(たいこう)たる 方便(はうべん)てふ事(こと)。更(さら)に心(こゝろ)に快(こゝろよから)ず。仍(よつ)て廿一才にて師父(しふ)の命(めい)に背(そむき)。永(なが)く法縁(はふゑん)