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青砥藤綱(あをとふぢつな)於(に)_二滑川(なめりかは)_一探(さぐる)_二 十文銭(じうもんせんを)_一話(こと)
最明寺(さいめうじ)時頼入道(ときよりにうだう)は。青砥藤綱(あをとふぢつな)の忠言(ちうげん)によつて。鎌倉(かまくら)及(およ)び諸国(しよこく)
の探題(たんだい)目代等(もくだいとう)にいたるまで。其(その)行跡(ぎやうせき)且(かつ)は黎民(たみ)の撫育(ぶいく)の是非(ぜひ)を糺(たゞ)し
給ふにより。各(おの〳〵)恐怖(けうふ)驚嘆(きやうたん)して。身(み)を慎(つゝし)み行(おこなひ)を正(たゞし)ふせしかば。自(をのづか)ら人気(じんき)も
和睦(くはぼく)し。上下(せうか)交(こも〴〵)穏(おだやか)にして。歎願(たんぐはん)愁訴(しうそ)も止(とゞま)りしに。時頼/心中(しんちう)些少(いさゝか)は易(やす)
しといへども。猶(なほ)も国家(こくか)静謐(せいひつ)のため。鶴(つる)ヶ(が)岡八幡宮(おかはちまんぐう)に参詣(さんけい)まし〳〵て。
神明(しんめい)の応護(わうご)を祈(いの)り。奉幣(はうべい)をなし給ひ。此夜(このよ)は神前(しんぜん)に通夜(つや)あり
けるが。暁方(あかつき)におよんで。新(あら)たなる霊夢(れいむ)を蒙(かうふ)り給ひ。扨(さて)は神明(じんめい)朕(わが)微(び)
忠(ちう)を憐愍(れんみん)なし給ふ処(ところ)にやと。厚(あつ)く報謝(はふしや)の賽(かへりまふで)し給ひ。夙(つと)に帰館(きくはん)を促(うながし)給ふ。
于爰(こゝに)此夜(このよ)。青砥藤綱(あをとふぢつな)。所用(しよよう)あつて他行(たぎやう)し。戌刻(いぬのとき)に立帰(たちかへ)り。滑川(なめりかは)の橋(はし)を
わたる折(をり)から。燧袋(ひうちぶくろ)に入(いれ)たりし鳥目(ぜに)十文(じうもん)。いかゝなしけん此袋(このふくろ)の口(くち)緩(ゆる)みて。鳥目(てうもく)
破落々々(ばら〴〵)と員(かず)を尽(つく)して川中(かはなか)ひ落(おち)たり。藤綱(ふぢつな)大に驚(おどろ)きたる容(てい)にて