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立(たて)んこと心易(こゝろやす)し去(さり)ながら。当国(とうごく)は北条(ほうでう)が旧里(きうり)にて。一族郎従(いちぞくらうじゆ)諸所(しよしよ)にあれ
ば。爰(こゝ)にて勢(せい)を発(はつ)せんは。謀(はかりこと)なきに似(に)たるべしと。手符(てわけ)を定(さだ)め謀計(はかりこと)を含(ふく)め。
三人五人(さんにんごにん)ヅヽ姿(すかた)を窶(やつ)し。忍々(しのび〳〵)に鎌倉(かまくら)に登(のぼ)せ。爰彼所(こゝかしこ)に散在(さんざい)せしめ。良(れう)
賢(けん)ばしめ羽翼(うよく)の臣(しん)。十六人は優婆塞(うばそく)に形容(いでたち)て。日々(にち〳〵)御所(ごしよ)および北(ほう)
条亭(でうてい)に徘徊(はいくわい)して。専(もつぱ)ら地理(ちのり)人和(ひとのくは)をさぐり。夜(よる)は鎌倉(かまくら)より一許里(いちりばかり)有
地蔵堂(ぢざうどう)に参会(さんくはい)して。軍議(ぐんぎ)数(しば〳〵)調練(てうれん)し。来(きた)る八月十五日。鶴(つる)が岡八幡宮(おかはちまんぐう)
放生会(はうしやうゑ)修行(しゆぎやう)の折(をり)から。例(れい)によつて執権(しつけん)社参(しやさん)あれば。その帰路(かへりみち)に埋伏(まいふく)し。
不意(ふい)に起(おこつ)て時宗(ときむね)を討取(うちとり)なば。諸侯等(しよこうら)阡陌(せんはく)に周障(しゆうせう)すべし。その虚(きよ)
に乗(でう)じて御所(ごしよ)へ切入(きりいり)。狼唄(うろたへ)武士(ぶし)を叩(たゝき)たて。柔弱(じうじやく)の将軍(しやうぐん)を捕固(とりこ)とし
大小名(たいせうめう)を伏(ふく)せしめんに。誰(たれ)か随順(ずいじゆん)せざらん哉(や)と軍議(ぐんぎ)こゝに一決(いつけつ)し。さて
鶴(つる)が岡(おか)へは良賢(れうけん)はじめ。屈強(くけう)の輩(ともから)八十/余人(よにん)御所(ごしよ)へ討入輩(うちいるもの)弐百人
其外(そのほか)百余人(ひやくよにん)は。市中(まちなか)爰(こゝ)かしこに潜居(ひそみゐ)て。機(き)により変(へん)に応(わう)じ。強(つよ)きを