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前生(ぜんじやう)今世(こんぜ)を示(しめ)し給ふにやと。半信半疑(はんしんはんぎ)なす処(ところ)に。膝下(しつか)に光輝物(ひかるもの)見えたり。
何心(なにごゝろ)なく取上(とりあけ)見るに。寸(すん)に余(あまり)たる鱗(うろこ)三ツありけり。時政(ときまさ)濶然(くわつぜん)として疑(うたが)ひ開(ひら)け。
伝(つた)え聞(き)く尊天(そんてん)の。其(その)本体(ほんたい)は宇賀神(うがのしん)にましませは。正(まさし)き神告(しんこう)疑惑(ぎわく)なから
しめんため。この顕証(けんしやう)を残(のこ)し給ふに必(ひつ)せりと。更(さら)に感佩(かんはい)身に余(あま)り。数回(あまたゝび)拝謝(はいじや)
して。彼(かの)鱗(うろこ)を畳(たとう)の紙(かみ)に押取(おしとり)。帰館(きくわん)なすと其まゝ。三ツ鱗(みつうろこ)を旌旗の(はた)記号(しるし)と
なせしが。これより北条家(ほうでうけ)代々(よゝ)の定紋(でうもん)となりたりける。扨(さて)示現(じげん)にまかせて。
国々(くに〳〵)の霊地(れいち)に人(ひと)を馳(はせ)て。法花経(ほけきやう)を見せしめらるゝに尽(こと〴〵)く巻尾(くわんび)に大法師(だいはうし)
時政(じせい)とぞ記(しるし)たる。音訓(おんくん)の相違(さうゐ)ながら。正しく諱(いみな)と同字(とうじ)なる物(もの)から。いよ〳〵
尊天(そんてん)の示現(じげん)を尊(たふと)み。日夜(にちや)の渇仰(かつごう)一方(ひとかた)ならざりけり
右大将頼朝鎌倉草業話(うだいしやうよりともかまくらさうげうのこと)
正二位(せうにゐ)右大将兼征夷大将軍(うたいしやうけんせいゐだいじやうくん)源頼朝卿(みなもとよりともけう)は。清和天皇(せいわてんわう)十代の後胤(こういん)。左馬権(さまごんの)
頭(かみ)源義朝(みなもとよしとも)の三男(さんなん)にして。後白川天皇(ごしらかはてんわう)の御宇(ぎよう)保元(ほうげん)三年二月。いまた十二/歳(さい)