翻刻
【右丁】
恵み母これを育し子弟各父母の自愛に依て一ッ
の花機成就す杼筬通糸之類は皆臣下にして君
に事て其用をなす者なり名誉の織人機を織れ
は其拍子に感して黄鳥(うぐひす)囀(さへづる)と云天地之間の万物
事々物々其感応なき事なしましてや衣食は人
身一日も無之してかなはざる物なり
筬之目よみの伝
一筬はひとよみと云は大慨【注①】諸国四十枚なり又五
十枚と云処々【注②】もあり糸は竪糸八十筋にてひと
よみなり尤一目へ二本入るなれば也是を二丈五
尺にて惣尺二百丈あり此目方生糸にて一匁二
分積り最も右の糸は二本合せよる故に一本に
分ちては四百丈なり依之百丈之目方三分づゝ也
【左丁】
右の糸は繭(まゆ)七ッ附にて取たる糸之糸之積なり
又しけ絹の筬は二十二よみ是糸数繭七ッ附の
糸にて千七百六十筋一疋の竪糸なり鯨尺長六
丈此惣尺【注③】万五百六十丈なり此糸目方三十一匁
六分八厘あり
筬目へ竪糸を入る伝
一二重立と云は地糸一重片糸一重若又其間に花紋
あれば別に織り竪糸の外にからみ糸を一重入
て三重𣚗へ巻なり
一片糸と云は筬一目へ糸一本つゝ入るを云なり
一ッ入と云は筬一目へ二本つゝ入るを云なり四ッ入
と云は筬一目へ四本つゝ入綾は二本つゝ綾取二枚へ
入れ平綾に成なり是は光繒(はぶとひ)【注④】素細(りうもん)【注⑤】と同じ惣て地合
【注① 「慨」は「概」の誤記。次コマ以降、同に付きママ】
【注② 「々」衍ヵ。NDLの翻刻では「々」に「マヽ」と傍記あり】
【注③ 「一」脱ヵ。NDLの翻刻では「尺」と「万」の間に「壹」の傍記あり】
【注④ NDLの翻刻では「はぶとひ」は「はぶたひ」とあり。「羽二重」ヵ】
【注⑤ NDLの翻刻では「細」に「紬」の傍記あり。「りうもんは「立文」「立紋」ヵ】