翻刻
【右丁】
し是居合を抜に刀之鯉口に刀の身のさはらず
して素直に抜と同じ筬は木太刀を打が如く心
に当ありて又手の内不尽様に残心之位を以次
の筬打に心を渡し一度毎に不成様にすべし
花機の杼を投るは花楼にあつて通糸の曳綾を
取る者を剣術之相手の如く心得て遅速(ちそく)を不厭(いとはす)
相手之業にしたがひ其間を見て程能く投べし
又花楼の上にて紋を引き綾を取る手の内は弓
を素引するが如く和らかに釣合て締(しま)りよく弦
のたるまざる様に引べし手の内に卵を拳が如
しおろす時分も又弓を引て止るが如く手に心
を入ておろさゞれは筈離(はずはなれ)のしたる弦の如く通
糸にいたみ付或は岩竹さわきて馬糸からまる也
【左丁】
故に弓を素引する心持に取扱べし投杼(なけひ)はすべ
て糸へ手の懸らぬよふにすべし手を懸るは白
機類ひなり筬は臍下へ力をもち擘(ひぢ)にて真直に
打附べし手先に力を入て打付る悪し又筬を
ねせて打はしまらす筬をしやくればめりを打
出すなり足は筬と一同におろすべしおろすとは
足を揚る事なり蹈竹を蹈たる足を揚れば綾取
下るなり惣て花楼にて通糸を引筬を打杼を投
ると蹈竹を蹈み足をおろすよほど拍子よく連
続して序破急の拍子自然に備れり其拍子を不
知は織物に光沢なく又竪糸時々切或村を織り
出す鍛錬(たんれん)は此所にあり織る人は父にし【注】花楼の
人は母なり機の竪糸横糸は子弟なり父これを
【注 NDLの翻刻文には「し」に「て」の傍記あり】