翻刻
扨それよりかいらうの契りあさからす天に
あらはひよくの鳥地に又すまはれんりのえた
とならんとかりそめなからいもせの中に成にけり
其後女房申けるは是はたつの都と申ところ
なりすなはち四方に四季の草木あらはせりいら
せ給へみせ申さんとて太郎を引きくしてこそ
出にけれ先ひかしの戸をあけてみれは春のけ
しきとおほしくてのきはの梅に鶯のこゑ
めつらしく青柳の糸のしつかに春風になひ
くかすみの漠よりもいつれの梢も花なれや
南おもてのすたれをあくれは夏のけしきみえ
にけり春を隔つるかき外には卯の花や先咲ぬ覧
池のはちすの露うけてみきは涼しきさゝ波に水
鳥あまたあそひける木々のこすえもしけりそ
ひゆふたちすくる雲まより声かすかなる時鳥
なきて夏とそしらせける西のみきはゝ秋なれや
四方の梢も紅葉してませの内なる白菊や霧立
こむる野をちかみまかきか露をわけ〳〵て声も
侘しきさおしかのなきて秋とてしられける