翻刻
なりし小児と言争ひやしたりけん泣顔してそ
ありける是なん泣〳〵ひとりゆくと答へよなと
いふへき歟鶴沢の橋を渡るとて
六道を二ツにわれは三途川
一途にねがふ後生安楽
折しも藤の花の見事なりけれは
松か枝に葉をのす首の長けれは
うへ鶴沢の藤浪の花
抜崩れし嶮岨なるは所謂針の山にも
ひとしければ
焼薬鑵あたまのねがひ今そたる
この世からなる針の山みち
浅川の流れに渕ありけれは
欲【歎?】ならは浅瀬〳〵と渡るへし
深き迷ひは後悔の渕
ひとつ 家の前には折しも此家の内義と
おほしく谷川の流れに小児の衣を洗ひてそ
ありける其さま山家育ちの髪をも結す
ありけれは今にもかのうばにわれら
か衣も取らるへしなといへあひけり