翻刻
居風呂桶を置て吹出す火をもつて湯を沸し
一ト処には鍋薬罐抔釣かけて物煮る事を
なす尚二か所には唯何となく六七尺の
間にほふ?〳〵と燃立たり其大いなるは
その侭に湯も忽ち熱青葉も即座に
しほるゝところをもつて知るへし人
いひて新地獄といふ見物の人〻引も
きらす爰に群衆する事 追日猶増れり
因ておのが家内小児なとも行て見度
事を言合けり爰に可笑は地獄に
行度しといふ也地獄にゆきたしとは
口合の悪けれ外になどか言はもある
へしといひとも亦しても〳〵も地獄に行
度しとそいひける途中に出て人に問ふ
われら衆生は地獄に行く者にさふらふ
道踏迷ひ難義せりをしへ給へといふ答て曰
此先に川あり行先に巌石抜崩れて
さもおそろしけなる山あり是を越えて行に
一ツの家あり其前を通りていくへし
しかる処に向ふより女子一人来れり道連れ