翻刻
御物入中〻言語に絶たりける
斯の如く大河一滴の水をもらさす止まる事
既に廿日におよひぬれは此上の大難を被為
思召事社【こそ】理なれ因て西条村開善寺へ《割書:御祈願所|》
御立退の御用意ありけるとかや 《割書:御用意而已ニテ|御立退ハ未有》
乍去 御城より彼の岩倉山抜崩し場所
まては二里に近き事なけれは譬急破の
変化ありとも御注進も不行届かつは人民流
失をも遁るへきためにとて御相図ののろし
をそおほせつけられける
四月十三日昼八ツ時頃既に湛場はからすも急破に及ひ
大河を止むる事二十日にして増りし水幅端所に寄ては
二里三里亦は四五里に近く川上より湛場迄は十里
にあまりしとそ然るを暫時に急破して押出す事
所謂大山の崩るゝか如く侍て聞に水の押来る
とおもふ者壱人もなく浪にあらす瀬にあらす
其高き事十丈有余にして只真ツ黒く山の如く
雲の如し左右の山〳〵谷間岩名【石?】に打当りあた
りはじけ鳴動非類にして幾千万の雷連なりて
落るか如く水煙り虚空にはしけ登り人皆魂を