← 前のページ
ページ 55 / 104
次のページ →
翻刻
おもひ〳〵に数の行末迄も便りなくアノ人聲
のおそろしき御前様訳を御存じかへと云に
蛤ふり返り此海へあの様な山を築たのハ
大変じやどふ云訳と思内此間岳【おか】を住
居せし小雀か仲間へ飛入して岳の様子
を聞て海を埋るは御臺場とて去年
の夏ハ異国から船の来るので御要害
御大名の大騒で御金が入ると云手前ハ
今迄いつくに居たと聞たれハ私ハ暫く
勧学殿の簾に住居いたし御影ニて
聞覚たる蒙求や史記に左傳其外も
読書ハ大概覚込て夫から上野浅草
山の御堂に堀の内の祖師か八戒
八葉の妙法蓮華経の題目をも聞覚
たることありまた神道をも心掛神田
山王芝神明其外社内拝殿の住居
に飽て御座敷御家形の御座敷御縁
の先へもひよろり〳〵と御長屋迄も飛
めぐり市中残らず裏表住居の商人
は欲の引ぱるつらの皮諸色を高く
金銀の借貸までも不実意を見るも
中〳〵氣の毒故広野へ行ハ流行の