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翻刻
蔵やしきに押入蔵守る士足輕ともうち
倒し千石余りの米ぬすミ取しか此頃
大方は捕ハれしと云ものありき五日の
しのゝめに品川の州崎にて津波々々と
呼るものありしかはすはハやとて我も〳〵と
山邊にのかれゆきしかハかの津波と呼
わりしおのこの心静かに人の家に押入
物奪ひ船にて去つるもありしとかや沖に
おろせし米船も三処よところ火かけられたり
白刃もておひやかされ黄金奪ハれしものも
少からさりしよし
剰へ今年春の半にかたしけなくも
天朝より寺々の鐘鉄砲に鑄改め夷防く
用にせよと詔玉ひしをとかたして長月の
盡る日 将軍より寺々へ下知し玉ひしか
幾日もあらてかゝる災ひありしほとに法師
とものところ得顔に佛のもの奪玉ハんと
せしゆへなと云もて行愚かなる下さまの
公の政うらミ奉るも少なからねは彼昔人の
云の葉むなしからましかハといとおそろしう
おもふものから半はかたむきたる旅のやとりに
くつれたる壁のそこより筆硯取出てと
もし火のもとにしるし侍るになん