翻刻
斬罪(ざんざい)に行(をこな)はれける浪人は此度の難(なん)をのがれしも偏(ひとへ)に
伝蔵がつけ知らせし故(ゆへ)なれはとて是(これ)より弥(いよ〳〵)実子(じつし)
のごとくにしたしみ娘も程(ほど)なく年明(としあけ)て帰(かへ)り来(きた)れは
兼而(かねて)約(やく)せしごとく伝蔵が妻女(さいぢよ)となし浪人夫婦(ふうふ)は
手習(てならひ)手跡(しゆせき)の指南(しなん)して渡世(とせい)せしが敵(かたき)にゆかりも
なかりしにや終(つゐ)に尋(たづね)来らず一 生(しやう)無事(ふし)にして天(てん)
命(めい)をもつて終(おは)りけるとなり今(いま)に此(この)伝蔵が子孫(しそん)
其所(そのところ)に住(ぢう)すとへぐり郡(ごふり)のものかたりぬ
怪談御伽童巻三終