翻刻
怪談御伽童巻五
城(じやう)ノ主水(もんどう)谷川(たにかわ)に《振り仮名:寄_レ情事|じやうをよすること》
泰山(たいさん)は土壌(どしやう)を譲(ゆづ)らず故(ゆへ)によく其(その)高き事をなす
阿海(あかい)は細(ほそ)き流(ながれ)をいとはず故によく其 深(ふか)き事を
なすとかや往(むか)し播磨(はりま)の国司(こくし)に仕へける士(し)に片島(かたしま)
正蔵 橋崎(はしさき)宇根(うね)右衛門といへる人あり此両士 断金(だんきん)
の交(まじは)り深く勤仕(きんし)の間にはいとむつまじくかたらひける
正蔵に男子(なんし)ひとり有名を幾之助といふ此子見め
形(かたち)心さまにいたるまで人にすぐれけれは夫婦のいつ
くしみ一入(ひとしほ)ふかく身の老(おひ)をしれて此子の人ならん