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あれとて始終(しぢう)をかたりけれはおしがは涙(なみた)玉をなし
わらはこそ其(その)宇根(うね)右衛門が娘(むすめ)さよにて侍(さむら)らへとて守(まもり)
袋(ふくろ)より有(あり)つる文を取出し母にみすれは母は夢(ゆめ)□
わきまへずふたり手(て)に手を取かわし嬉(うれ)し涙(なみだ)に言葉(ことば)
をなししがはやう〳〵涙をおさへかくまでちきり深(ふか)き
事をばしらで心に物を思ひながらつみふかく身(み)のうへ
をかたりあかし侍(はんべ)らはざりし事の悔(くや)しさよといへは
母もこしかたのことゞもかたり出て互(たかい)にうれしさいわ
んかたなく悦(よろこ)びあへり主水(もんど)は用の事ありて外(ほか)へ
出たりしか月さし出る頃 帰(かへ)りぬれは母もおしがも
言葉(ことば)を揃(そろ)へひとつ思ひなる事をしらで過しつる
はかなさをかたれは主水はうつゝ共わからず同じ
思ひにこかれし事を思ふにも彼(かの)谷河(たにがわ)のなかれに
拾(ひろ)ひ得し木の葉(は)のぬしぞふかしとしたひしも
すべもなき心のくまならしとおもふにぞ女は又
年来(ねんらい)の物思ひも夢(ゆめ)の覚(さめ)たる心地(こゝち)するにも世(よ)
を去(さ)りぬ父母(ちゝはゝ)の事おもひ此 世(よ)にある人々にはかく
思ひまうけぬ対面(たいめん)もなすそかし亡(なき)人のたまのあ
りかもとめてつけしらせん■■もかなと思へと夫(それ)は
いとかたき事なりといとゞ哀(あわれ)をそへぬ男は始終(しぢう)