← 前のページ
ページ 123 / 136
次のページ →
翻刻
撲取事梓し申けるときに信長公/不審(ふしん)し給ひいか
故にやと御/尋(たづね)有しに。相撲ハはなれものにて/強(つよ)きものものが
/勝(かつ)にあらず弱キものが/負(まけ)るに/定(さだまり)たる事ならねバ御持弓を
取/損(そん)じ。/若敵(もしあいて)に御大将の弓を渡してハ高名むなしく成
べしと/答(こた)へけれバ信長公かれが志を/感(かん)じ給ひ。/角力(すまふ)取/節(せつ)
御褒美に御持弓/遣(つかハ)さることを/止(とゞま)り給ひ其以来御ほうび
にハ餘のものを下し置給ふとなん。勧進相撲の十日目の結ひ
に勝たる関に弓を渡す事。此余/風(ふう)なりとぞ。役ずまふ三番な
るに。関ばかりにほうびを渡し。其以下/本意(ほい)なしとて。近来ハ
関に弓。関脇に/弦(つる)。小結に扇子を渡す。此弓渡しのこと/元来(ぐハんらい)
/武門(ぶもん)より/起(おこ)りし/故(ゆへ)。/請取渡(うけとりわたし)に。/故実作法(こじつさほう)有て。関直に請取らね
バ。方屋のうち。/故実(こじつ)の案内をよく知りたる者出て。此弓を請取也。
此弓ハ四本柱の内出掛の正面の/乾(ゐぬい)の柱に結付置しを。近代出掛
の柱に結付をく。其外十日目にハさま〴〵/故実古例(こじつこれい)の/儀式作法(ぎしきさほう)
等/数多(あまた)なれど。近来次第に行ハれす成たれバ。当時の用の
ミを書しるす。此余の事ハなを/後(のち)の/考(かんがへ)にあづけ/後編(こうへん)に残す
古今相撲大全巻之下未終