← 前のページ
ページ 47 / 136
次のページ →
翻刻
ならぶものなかりけり。光遠にいもうとあり。みめことがらけはひ
もよく。すがたたをやかなりしが。ちからは光遠を二人ばかり。あ
はせたるほどにて。大きなる/鹿(しか)の/角(つの)を。ひざにあてゝ。ちいさき
木を折やうに折けり。あるとき人を/害(がい)したる男きたりて。
かのいもとを人/質(じち)にとりぬと。つげきたりけるに。光遠打
わらひて。我がいもとをば/薩摩(さつま)の氏長ばかりぞ/質(しち)には。と
らめ。其外にはおぼへぬものをとて。すこしもさはがざりけ
り。いもとはしちにとられながら。かの男が刀もつたる手をひ
ひだりの手にてとゞめ。右の手にては。かたはらはらに矢の/箆(の)の。あら作
したるが二三十ばかりあるをとりて。手ずさみにゆびにて/板敷(いたしき)
にあてて。にしなに/朽木(くちき)のやうにくだくるを見てぬす人おそ
れて。女をはなちつゝ。/逸(いち)あしをいだしてにげさりけり
古今相撲大全巻の中本終