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座中にて取られしに。西村おもひけるは。/勝(かち)たらば御こゝろに
やそむかん。/負(まけ)たれば/軽薄者(けいはくもの)とやおぼしめさん。いかゞせんと思ひ
しが。いや〳〵/侍(さふらひ)のならひ見かぎられては/恥(はぢ)なりとおもひ/精(せい)を
出してくみあひ。/終(つひ)に氏郷に勝にけり。氏郷/無念(むねん)なりと一番と
らんとて。ちから/足(あし)をふまれしかば。/近習(きんじゆ)の者共あはれ左馬介
負よよし。此度負ずは/手討(てうち)にやせられんと。おの〳〵手にあせ
をにぎりけり。西村また/思案(しあん)しけるは。今度負たらばいよ〳〵/軽(けい)
/薄(はく)になるべし。手討にならんは/是非(ぜひ)なしと今度も西村勝にけり。
其とき氏郷ゑみをふくみ給ひ。/汝(なんぢ)がちからは我よりすぐれたり
とて/加増(かぞう)の地を出されける。是左馬介が/直(すく)なる心を/感(かん)ぜ
られし故也。此とき相撲に/負(まけ)たりましかば。ながく見おとさる
べきに。負ざりしこそ。武士道の/本意(ほんい)なれ
/織田信長公(おだのぶながこう)相撲御覧の事
/元亀(げんき)元年二月廿五日。信長。/岐阜(ぎふ)を御立有て翌日江州の/常(じやう)
/楽(らく)寺につかせ給ふ。御/遊(ゆう)の/興(かう)を/催(もよう)されんとて。/暫(しばら)く爰に/逗(とう)
/留(りう)有て。国中の相撲取共を召あつめ。相撲をぞ始られける。
皆/勝(すぐ)れたる/上手(じやうず)にてはあり。今日を/晴(はれ)と取程に。/鴨(かも)の入/頸(くび)。みづ
車。そり。/捻(ひねり)。なげなんどいふ手を。我おとらじと取しかば。何の