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司は勝負の是非(ぜひ)を見/分(わく)るばかりの役(やく)にて役がらおもき
ゆへ其餘はつとめず。或はすまふ人へ贔屓(ひいき)之方より花な【ど】
出るときも。此の前行事よみあけ披露(ひろう)する也。此の役がらの人
近年は装束(しやうぞく)も美服(びふく)をかざらず。故に本名を知たる人も稀(まれ)
なるやうに成たり
行司伝来(ぎやうじでんらい)《割書:并》装束団扇風流(しやうぞくうちわのふうりう)《割書:附》古今行司姓名(ここんぎやうじのせいめい)
往古(わうご)朝庭(てうてい)に相撲行はせられける時は。立合(たちあはせ)と号(がう)し。地下(ぢげ)の官人(くはんにん)是を
つとむ。江次第に詳(つまびらか)也。行司は相撲道(すまふどう)におゐて。式法故実(しきほうのこじつ)はいふに及ばず
相撲の事一/通(とをり)。委明らめたる上ならでは。中〳〵此職/勤(つとま)りがたし。甚
重(おも)き役(やく)也中古勧進と成ても勿論(もちろん)也。行司が見極(にきはめ)たる勝負に
角力人より争論(さうろん)に及ぶことにあらざる也。然るに近来(きんらい)段々此道
の故実共(こしつども)用ゆる人/稀(まれ)なるやうに成て。行事が上(あげ)たる団(うちは)をさゝへ侍
など。いと騒(さう)〴〵敷(しき)有様也。双方(さうほう)旧儀(きうぎ)を改(あらため)見ば是非(ぜひ)分明(ふんめい)なるべし。
古代行事の装束は。侍烏帽子(さふらひゑぼし)を戴(いたゞ)き。素襖(すをふ)を着(ちやく)し。露(つゆ)を結(むすび)て
たすきとし。揮(ざい)を持て相撲を合せしもの也。中古風流になり烏帽子を取(とり)
茶筌髪(ちやせんがみ)にして。素襖と陣羽織(ぢんばをり)に替(か)へ裁付(たちつけ)をはき。揮(ざい)を唐団(とううちわ)に換(かへ)たり。
此出立/漸(やうやく)久しかりしに。享保年中より又装束/転(てん)して着(き)ながし小袖の上に
上下を着し。股立(もゝだち)を取て出立右の風流より今の変化(へんくは)に心を付べき也