翻刻
【右丁】
金言(きんげん)童子教(どうじけう)序(じよ)
此書(このしよ)は古(いにしへ)の聖賢(せいけん)の語(ご)にて代々(よよ)人口(じんこう)に膾炙(くわいしや)せるを《割書:予(よ)》
頑愚(ぐわんぐ)なりといへども諸書(しよ〳〵)の要語(ようご)を摘(つみ)年々に拾(ひろ)い月々に
集(あつ)め且(かつ)句(く)ごとの上(うへ)に鄙言(ひごん)を以(もつ)て抄(しやう)し一書(いっしょ)となして家族(かぞく)の
幼童(ようどう)読書(どくしよ)の階梯(かいてい)にと与(あた)へけるを友(とも)なりし人の梓(し)に鏤(ちりば)め
世(よ)の幼童(ようどう)の便(たより)にもせよといへるにいなみがたく金言(きんげん)童子(どうじ)
教(けう)の名(な)を蒙(かふむ)らしめ書林(しよりん)に属(ぞく)しぬ古(いにしへ)より諸家(しょか)の著述(ちよじゆつ)多(おほ)し
といへども要句(やうく)すくなし初学(しよがく)の幼童(ようどう)此書を得(ゑ)て聖賢(せいけん)を遠(とを)しと
せず即(すなはち)今(いま)教(おしへ)を承(うけたまは)ると思ひ心腑(しんふ)に入(いれ)てよまば益(えき)を得(う)る事
多(おほ)からん尤(もっとも)一 句(く)も私意(しい)よりいでたるにあらざれば愚編(ぐへん)也とて
あえていやしんずる事なかれ
于時正徳六年丙申春正月日
《割書:此書に類して|童観対句抄と云書出来》勝田祐義編 【黒印:祐義】
【右丁下段】
せい
だして
おぼへま
せう
ぞ
【左丁】
《割書:諸書要語|童蒙須知》金言童子教《割書:竝抄|》
【上段】
良薬はにがしともよく用ひぬれば
やまひを治する徳ありにがきをきらひ
もちひざれば良薬も益なし
【下段】
《振り仮名:良薬雖_レ苦_レ口|りょうやくはくちににがしといへとも》 《振り仮名:用_レ病必在_レ利|やまひにもちひてかならずりあり》
【上段】
人よりいさむる所の忠言はかならず耳に
さかふものなれ共よく用ひて身に
おこなひぬれば其身たゞしく成て徳也
【下段】
《振り仮名:忠言雖_レ逆_レ耳|ちうげんはみゝにさかふといへども》 《振り仮名:行_レ身必在_レ徳|みにおこなひてかならずとくあり》
【上段】
くすりを用てやまひをぢする事をば
誰もしるといへども学文をすればよく
身のおさまるということをしる人なし
【下段】
《振り仮名:雖_レ知_二薬理_一_レ病|くすりのやまひをおさむるをしるといへども》 《振り仮名:不_レ知_二学理_一_レ身|がくのみをおさむるをしらず》
【上段】
せきへきは大きなる玉也寸 ̄ン ゐんは少しの
間を云玉はまことの宝にあらず寸陰
を得たるをよろこびきおふて学すべしと也
【下段】
《振り仮名:尺璧非_二於宝_一|せきへきはたからにあらず》 《振り仮名:寸陰可_二是競_一|すんいんこれきそふべし》
【上段】
よく書をよみ智いたりぬれば大けん
人ともなる也故にまんばいの利ありと也
書をよめば書はよく人に君子の智を添ル也
【下段】
《振り仮名:読_レ書万倍利|しよをよめばまんばいのりあり》 《振り仮名:書添_二君子智_一|しよはくんしのちをそふ》
【上段】
金銀あるものは書楼を立て書をこめ
置べし金銀のなきものは書を入 ̄レ 置 ̄ク
櫃(ヒツ)などを拵(コシラヘ)書を入 ̄レ おき常に見 ̄ル へし
【下段】
《振り仮名:有則起_二書楼_一|あらばすなはちしよろうをたてよ》 《振り仮名:無即致_二書櫃_一|なくはすなはちしよきをいたせ》
【上段】
しづかなるまどの前に居ていにしへより
つたはれる書を見るべし又灯のもと
にしてはよみたる書の義理を案すべし
【下段】
《振り仮名:窓前看_二古書_一|そうぜんにこしよをみて》 《振り仮名:灯火尋_二書義_一|とうかにしよぎをたづねよ》