翻刻
【右丁】
【上段】
人にものを教るにわ先小なる事を教
近き理の事を教ゆへし後に至りて大
なる事又は理のふかき事を教ゆべし
【下段】
《振り仮名:教_レ 人以_二小近_一|ひとにをしゆるにしゆうきんをもつてし》 《振り仮名:而後以_二大遠_一|しかうしてのちにたいゑんをもつてす》
【上段】
賢なる人を貴みて是を用ひ諸人
をも捨ずしてつかふべし善なる人をば
悦て用ひ不芸なる人をはあわれむべし
【下段】
《振り仮名:尊_レ賢而容_レ衆|けんをたつとひてしゆをいれ》 《振り仮名:嘉_レ善矜_二不能_一|せんをよみにしてふのふをあはれめ》
【上段】
吾身のおもて正しき時はかけの曲る事なし
水を入《割書:ル|》物が丸ければ水も丸く成なり
己正しき時は一家のもの正し
【下段】
《振り仮名:表正則影正|おもてたゞしきときはかげただし》 《振り仮名:盤円則水円|ばんまとかなるときはみづまとかなり》
【上段】
三日人にあわずは前にあひたる時の思ひ
をなす事なかれ三日の内には何ほど
に智の発明したるもしられずと也
【下段】
《振り仮名:三日不_二相見_一|みつかあいまみへざれば》 《振り仮名:莫_レ為_二旧時看_一|きうじのかんをなすことなかれ》
【上段】
心におゐて三たひ考て云てもよき事
ならは一度云べし九たひかんがへて能
事ならば一度おこなふべし
【下段】
《振り仮名:三思而一言|みたびおもひてひとたびいへ》 《振り仮名:九思而一行|こゝのたびおもひてひとたびおこなへ》
【上段】
何事をするにも古への賢人の定め
給へる法を師とせざればその事
よく長くつゞきがたし
【下段】
《振り仮名:事者不_レ師_レ古|ことはいにしへをしとせざれば》 《振り仮名:難_二以長久_一矣|もつてちやうきうしがたし》
【上段】
愚者は目のまへに有ものをばかろしめ
て耳に聞たるを貴ひ近きものをか
ろしめて遠きにあるをたつとむ也
【下段】
《振り仮名:無_二賎_レ目貴_一_レ耳|めをいやしみみゝをたつとぶことなかれ》 《振り仮名:莫_二軽_レ近重_一_レ遠|ちかきをかろんじとをきをおもくする事なかれ》
【上段】
人のかたる事は聞ぬるには九ツのかなへ
よりもおもきもの也目にて見ぬれば一
ツの毛よりもかろく思はるゝ事あり
【下段】
《振り仮名:聞時九鼎重|きくときはきうていよりおもく》 《振り仮名:見後一毫軽|みてのちいちがうよりかろし》
【左丁】
【上段】
馬はものはいわぬものにてしかも用に
立もの也故に人をばつからかす共馬
をはつかれぬやうによくいたはるべし
【下段】
《振り仮名:令_レ疲_二労於人_一|ひとをひろうせしむとも》 《振り仮名:慎而無_レ労_レ馬|つゝしんでむまをろうする事なかれ》
【上段】
敵あまりにつよくはしばらく降参
すへし敵を恐るゝを見ては悦□□成
事をすへし是軍法の理なり
【下段】
《振り仮名:敵強可_レ 下_レ之|てきつよくはこれにくだるべし》 《振り仮名:懼者可_レ歓_レ之|おそるゝものをはこれをよろこはすへし》
【上段】
己はよく義を行ひて此義をつくし
たるを以利徳をつがんと思ふ心有へから
す利を思ふはまことの義にあらず
【下段】
《振り仮名:正_二於其義_一而|そのぎをたゞしうして》 《振り仮名:不_レ謀_二於其利_一|そのりをはからざれ》
【上段】
己は偏に道を明かにつくして而して
此道をつくしたる功を以人にほめら
れんなどゝおもふべからす
【下段】
《振り仮名:明_二於其道_一而|そのみちをあきらかにして》 《振り仮名:不_レ計_二於其功_一|そのこうをはからざれ》
【上段】
人より恩徳を得ては必報せんと
心がくべし一言のなさけにあづ
かりたるをもよくほうずへし
【下段】
《振り仮名:無_二徳不_一レ報矣|とくとしてほうぜざる事なく》 《振り仮名:無_二言不_一レ報矣|こととしてむくいざることなし》
【上段】
義をよく行ひて能事をもしける
ものかなと是を利と思ふべし利徳
を取て是を利なりと思ふべからす
【下段】
《振り仮名:行_レ義以為_レ利|ぎをおこなひてもつてりとせよ》 《振り仮名:不_二以_レ利為_一レ利|りをもつてりとせざれ》
【上段】
文を習ふものを朋とすれば己も智
をます也いたづらに居るものとかたれば
われもついへに日をくらすなり
【下段】
《振り仮名:効_レ文者為_レ朋|ぶんをならふものをともとせよ》 《振り仮名:有_レ徒者勿_レ語|いたづらにあるものとかたる事なかれ》
【上段】
人によくかず〳〵事を教ゆれば吾も自
然に文義を悟る事ありて然なり
人を□むは己を恵になる也
【下段】
《振り仮名:教_レ 人数々則|ひとにおしゆるにかず〳〵するときは》 《振り仮名:己了_二此文義_一|おのれもこのぶんぎをさとる》