翻刻
【右丁】
一種 さうちく しゝかくし アスベルチイ 《割書:アスハラキユス|の誤称なり》
時珍(しちん)の説(せつ)に《振り仮名:■樵通志|ていしやうつうし》【■は鄭ヵ】に葉(は)《振り仮名:似_二薯蕷_一者|しよよににたるもの》謬(あやまり)なりと云は却(かへつ)て非(ひ)なりこれ百部(ひやくぶ)を知(しら)さるなり
時珍の説に《振り仮名:有_二細葉茴香_一|さいやうういいきやうあり》と云 是(これ)なり春月(はる)宿根(ふるね)より生(せう)す初生(しよせい)小指(こゆひ)の大(おほひ)さ形(かたち)竹筍(たけのこ)の如(こと)
く荷蘭人(をらんたしん)これを食(くろ)ふと云 長(てう)すれは枝を分ち葉(は)を生(せう)す小茴香(せううゐけう)に似て粉緑色(ふんりよくしよく)又きし
かくしにも似て稜(かと)なく円(まる)し高さ四五尺葉の間に小き淡黄花(うすきいろのはな)を開(ひら)き天門冬の花に
似たり根は百部に似て塊(かたまり)なし
一根 たまぼうき
形状(かたち)しゝかくしに似(に)て苗(なへ)低(ひき)く一尺 許(はかり)にて斜(なゝめ)に向(むか)ふ花(はな)の形(かたち)もしゝかくしの如(こと)くにて淡紫色(うすむらさきいろ)
下垂(けすい)す長(なか)き根(ね)数条(すじやう)あり
一種 きしかくし
【左丁】
一株(ひとかふ)に叢生(さうせい)し高(たか)さ一尺 許(はかり)形(かたち)しゝかくしに似(に)て葉(は)に稜(かと)ありて糸杉(しさん)《割書:ほろ|すき》【注】に似て軟(やはらか)なり小白花を
開(ひら)き円実(まるきみ)を結(むすひ)て紅色(こうしよく)南燭(なんしよく)《割書:なん|てん》の如(こと)し一種小にして四五寸にして葉(は)細密(さいみつ)なるものあり
しゝかくし以下の品(ひん)は皆(みな)天門冬の類(るい)に属(そく)し百部の属には非(あら)す
何首烏(かしゆう) うわかつら《割書:本草|和名》 つるとくだみ《割書:武州豊|嶋郡》
漢名一名 苦蔞(ころう)《割書:邵武|府志》 桃柳藤(とうりうとう)《割書:何首|烏録》
交茎(こうけい) 野苗(やへう)《割書:同|上》
武州(ふしう)江戸 近郊(きんこう)人家 播籬(かきね)に多(おほ)し春月(はる)宿根(ふるね)より生(せう)す苗(なへ)蔓延(まんゑん)す初生(しよせい)紅色(こうしよく)葉(は)は山薬(さんやく)に
似(に)て厚(あつ)く背(うら)紅紫色(あかむらさきいろ)蔓(つる)一二丈木上に引 秋月(あき)葉の間に穂(ほ)をなして形白花の《振り仮名:虎杖|こじやう》《割書:いた|とり》に
似たり実(み)は三稜(みつかと)ありて蕎麦(そは)の如(こと)し根は甘藷(かんしよ)《割書:さつま|いも》に似て硬(かた)く赤褐色(あかうるみいろ)これ雄(ゆう)にして赤(せき)
何首烏(かしゆう)なり其根(そのね)白色(はくしよく)なるは雌(し)なり白何首烏(はくかしゆう)也又 和名(わめう)にかしうと云食料する物は
漢名 黄独(わうどく)《割書:鎮江|府志》なり
【版心の中央部に記載あり】
何首烏
【注 割書の「ほろすき」は「ほそすき」ヵ(別名に「ほそいとすぎ」あり。出典:『日本国語大辞典 精選版』(小学館)「いとすぎ」の項)。】
【別の字の上から書き直している文字有り:十二行・下から八字目「の」(「に」の上から)、二十六行・下から七字目「紅」、二十八行・下から一字目「赤」の振り仮名「せ」】