翻刻
じやうのわかれかやさらは〳〵といふ声も其おもかけもみへされは今は有にもあられすして又ちく
生のすかたと也高岩尾にかけ上り《割書:いろ| 》そなたの方をなかめやり天にあこがれちにふしてなきか
なしめる其有様世にためしなきわかれのていあはれ也ふしき也げに尤也ことはりや皆かんせぬものこそなかりけれ
第四
されはくわういんやのごおし月日にせきもりすべざれはあべのとうし其とし十才にあまりけり本ゟよの
つねのしやうたいならねは八才の時よりはしめてしよをよみ一を聞て十字をさとり一と聞し事二
とわすれずその名をあらためあべのとうしはるあきらとそ申けるあけくれ家につたはる天もん
どうのまき物に心をうつしちうやまとろむひまもなし其うへ母のやかんりうくうのひふう?めいぎやく【めいぎよく=名玉】
迄をあたへぬれは猶たのもしさかぎりなししかる所にふしぎやこくうにおんがく聞へ花ふりしうん一村た
な引是はいかにとみる所にくもの内ゟはくはつたるらうそう一人しゝにのりろくぢ【陸地?】に行かことく
らいけん有こそふしきなれわか君御らんし只ほうせんと立給ふ時にらう僧こくうゟ我は是
たいとうようしうのじやうけいざんにとし久しきはくとう上人といふ物也なんぢがせんぞあべのなか丸と
いつし【言ひしが変化した「言っし」という言い回しがある】物たいとうに渡り我にあひて天もんじり【天文地理】みやうじゆつ【妙術】をならいきはめ其書物なんぢか手
につたはり持といへ共たしかに其りをきはめゑず然ばおことはかのなか丸かさいたん也されはせんせ【前世】のさ
いち【才知】をわすれつしていにしへにまされる也ゐんやうれきすう天もんじりかし【加持】ひふ【秘符】のふるきことなんぢに
つたへ天下のたからとなすべきと書物一くわん取出し是則きんうぎよくとゝ【金烏玉兎と】いふしよ也なんぢか家に
つたわるほきないでんに是を取そへきはめなはあく病さいなんはいふに及ずたとへはしやうかう【定業】
かぎりの命也共一どはそせいにおゐてうたがいなし扨なんぢか母のやかんも誠はしのたの明神是い
にしへのきび大臣也昔?の□ん【をん】をほうぜんためちくしやうのくをうけてなんぢか父にゑんのむすびさかゆ
る家のまもりと成つたへ置たるひふめいぎよく少もうたがふ事かれ我たいとうのじやうけいざんに
有といへ共ほんし【本地】是もんしゆほさつ天もんじりのみやうちゑを衆生にあたへん其ため也うたかふことなかれ
とたちまちもんじゆとあらはれくも?にかけつて入給ふはるあきらこは有かたき御つけやと跡をはる
かにふしおかむ所へ父やすな有し所へ来り給へは若君くたんの有様つふさに語る父なゝめならす【斜めならず】よろ
こびおふたのもしやなを〳〵おこたることなかれと家につたはる書物にきんうぎよくとを取そへち
うや是をみひらきていよ〳〵しんづうのみやうじゆつをきはめける所にいつく共なくからす二ひきとび
来りのきにとまりてしはしか間さへつりしをはるあきらあやしく思ひ母のやかんかあたへしくたんの玉を
取出しみゝにおしあて聞いたりしはらくあつて二ひきのからす東西へそとびさりけるはるあき
ら是を聞いかに父上只今からすのさへずりしことふしきのことをさへづりて候先一つは都のからす
今一つはくわんとうのからす也都からすがあつまの鳥にかたるやうこんど都にはみかとの御のふ也此いはれ
はだいり御ぞうゑい有し時よるのおとゝのうしとらはしら石ずへのしたにへびとかはすいきな
からつきこめられへびはかわづをのまんとしかわずはへびにのまれしとあいたゝかふ其いきとをり
天に上りついに御かとの御のふと成是を取のけ給はゝ御のふはしさいなくへいゆふ有へしと
さへつりて候いかさまふしきにそんし候とまき物を取出しうらないてみればからすのことばに少もた
かはずどうじ悦ひ是さいわいのこと也いそき都へ上りそうもんのとげ奉り此たんをうらないいか成
よにも出申さんいかゝあらんと申上るやすなうれしくあふいしくも申たり是あべの家引おこさんずいそ
□【う】也君の御ため身の□□□□□一もはやくのほるべしとおや子打つれ都をさして□《割書:三重| 》□…