翻刻
□□□しものそれかしなわめのはぢにおよふこと天道にすてられたり《割書:いろ| 》ゑゝ父上のおほしめ
されん口をしやとはかみをなしいかるゝつね平聞てやあさいぜんのかうけんとはちがいやみ〳〵是いけ□
られしよなみれはなか〳〵はらのたつそれかうへをはねよかしこまつてかたはらへ引すゆる所
へかしうふじい寺【河州葛井寺】のぢうそう【住僧】らいはんおしやうともあまたにて来らせ給ふつね平本ゟ
たんなのことなれは是はぞんしよらざる御らいりんにて候おしやう聞召ぐそう此頃やうし
あつて都へのぼり一両日いぜんに罷下りきでんないほうびやうきをもぞんぜず今日
しゆく所へ立こへしが承はりしゟなか〳〵げんきにみへて候きてんの事たづね候へはようし
有て此所へ来られしと聞てさいはいみやうじんへ心さしのついてながら御めにかゝらんた
め参りたりしてそれなるめしうとはいかやうの事にてはからひ給ふつね平さん候まつ
思召よりしゆく所まで御らいか忝候さて此たんはかやう〳〵のらうぜきゆへかくめし取てせ
つかいいたし候とはしめおはりをかたりけるらいばんきこし召もつ共【もっとも】さもあらんさりなからぐ
そう是へ参りあいせつがいせらるゝ物をみすてゝとをるべきやふしきに来るもふつしん
の御かごにて有らんいかやうのとか有共日頃たんなのよしみにふしやうなから此めしうと
をそれかしに給はり候へつね平承はり仰そむきかたく候へ共きやつめからう〳〵の【牢籠の】とが人に
てさいのめにきさみてもあきたらす候へはまつひら御ゆるし下さるへしとことはをわけて申
けるおしやう聞召尤しごくいたしぬれ共出家たらんものがたとへてうるいちくるい【鳥類畜類】也共わ
か□にかへても命をすくうか出家のさほう也たとへ申請たり共おとこはたてさせ申まし
則参りて□を□□□□そう□てにけらん《割書:おすふし| 》ひらに〳〵にと申さるゝつね平今はせひなくお
しやうさやうにの給ふをいかていなとは申さるへきそれ〳〵めしうとをおしやう様へ渡し申せかしこ
まつてあひ渡す扨それかしはしさいあつて是よりすぐに立ゟかたの候へはさつそくおいと
ま申上けんとれいきをのふれはおしやうも同じく此方ゟしそうをもつて御れい申さんさ
らは〳〵と《割書:いろふし| 》いふこゑの両方へこそわかれける其後やすながいましめ切ほとき我々こそま
ことの人間にあらず御身おもはぬなんにあひ給ふも皆我々かゆへなれはせめてなんぎ
をすくはんため姿をへんしてたばかり申たりさいぜんの命の《割書:色おん| 》いつの世にかはおくるへ
き只何事もじせつたうらいといふかと思へはたちまちかたちをへんしてやかんと也ゆき
方しらずうせにけりやすなはとかくあきれはてしはしたゝずみいたりけりゑゝ《割書:ふしゆり| 》心な
きちくるいもなさけの道をわすれず命のおんをおくりたるありさまけに人間にま
さりたりとてみなかんせぬものこそなかりけれ
第二
あへのやすなは思はぬなんにあひけれ共やかんか心さしゆへふしきに命たすかりけりされ共爰かし
こときずをかうむり心もくるしくいきをつかんとたに川へくだる所にしづのめと打みへて二八斗
の女房のいとやさしけ成よそをひにてかの川へおり立みづをくむとみへしか何とか□□□に
けしとみかつはとおつるされ共つたかつらに取付あやうき所にやすなはつといふて立ゟ□□□
取て引上扨々あやうき次第やなけがはしなきかといへば女房ほつといきをつき□□□□□□
しけなきこと共やすでにしすべき所をば御たすけ給はるたんかへす〳〵も有り□□□□□□□
□□□御身はいつくいか成御かたそやかやうの所へ来り合せ給ふもひとか□□□□□□