翻刻
【右丁】
琉球(りうきう)の図(つ)にして葉の形 冬青(とうせい)より大(おほい)に桃葉珊瑚(とうやうさんこ)に似て狭(せは)く先 円(まる)く中
山伝信録(さんてんしんろく)#2に烏木葉(うほくのは)《振り仮名:如_レ桂|けいのことくにして》直上(ちよくしやう)外与常木(ほかしやうほくと)《振り仮名:不_レ異|ことならす》中心(ちうしん)木質(もくしつ)黒(こく)
色(しよく)然(しかも)亦(また)《振り仮名:有_二白理者_一|はくりのものあり》と云(いふ)説並に図(つ)に《振り仮名:因|よ■》#1て考(かんか)ふれは時珍(しちん)の説(せつ)に
葉(は)似棕櫚(しゆろににたり)#3と云に合(あは)されとも其木の形状(かたち)を明(あきらか)に云(いは)されは時珍(しちん)
の説(せつ)疑(うたかは)しとなすなり
樺木(くはほく) かば かばのき《割書:信|州》 くさゞくら しらかは《割書:奥|州》
うだいまつ《割書:信|州》 かんば 靴皮木(くはひほく)#4《割書:物理|小識》
樺桃(くはとう)#5《割書:彙苑|詳註》 鵲樺皮(しやくくはひ)《割書:明一|統志》
西南(せいなん)の国(くに)に無(な)く東北の国(くに)にあり其内(そのうち)野州信州甲州 等(とう)に尤(もつとも)多し
葉は桑の葉(は)に似て大に堅(かた)く周(めく)りに細(こまか)き鋸歯(かゝり)あり春夏の間葉の本に
穂(ほ)をなし長さ二寸 許(はか)り小き白色の花を開(ひら)き後(のち)実(み)を結(むす)ふ形しての莢(さや)
【左丁】
に似たり秋の末に熟(しゆく)し落(おち)て生し易(やす)し葉は霜後(しもこ)に落(を)つ樹皮(しゆひ)白(しろ)くして
黒(くろ)き班(またら)#6あり肌(はた)はさくらの皮(かは)に似て他木(たほく)と異(こと)にして甚た剝(はき)やすし信
州にて薄(うす)く剝(へき)て器物(きふつ)又は短冊(たんさく)に作(つく)り出(いた)す同州にて此樹皮能く焼(もゆ)
るゆへに雨中(うちう)の松火(たいまつ)に作(つく)り用ゆ又 鸕鷀(う)を使(つかふ)て魚を取(と)る時(とき)の用(やう)
となすゆへにうだいまつといふ尤(もつとも)此皮 余木(よほく)と異にして脂(やに)多きゆへ
水中(すいちう)に入れ大雨(たいう)に逢(あふ)といへとも火(ひ)滅(きへ)さる者也蘭山甲州徳本の無尽(むしん)
蔵(さう)を引て同書(とうしよ)に樺皮を多く用ゆ故に今世(いまよ)に用(もち)ゆる者 多(おほ)し
此を焼(やけ)は臭気(しうき)あり故(ゆへ)にくさゞくらと呼(よ)ふ又同書に樺(くは)#5を隠(かく)して
華(くは)に作(つく)るといへり先(さき)に出(いた)す処(ところ)の菜部(さいふ)菌類(きんるい)に云る樺皮#5を以て菌
に当者(あたるもの)の毒(とく)を解(け)すと云(いふ)は此物(このもの)也#7 集解(しつかい)に此皮(このかは)を暖皮(たんひ)と云る説
は誤(あやま)りとなすへきか易州府志(ゑきしうふし)及(およ)ひ西京通志(せいけいつうし)には蘗木(わうほく)の重皮(てうひ)を
暖皮(たんひ)といへるに因て此(この)相違(さうい)たるを知(しる)へきや