翻刻
【右丁】
蝶鵆(てうちとり)の怪
もろこしのせいこう【不明】は
とうかいにおぼれて
けてう【化鳥】となりし【精衛=伝説上の小鳥の名前】
るいいつのころにか
ありけん
ふじの
すそのゝ
へんに大い
なるてう【蝶】と
ちどりのけ
ものさうしん【総身】は
みの【蓑】ゝごとくの
け
をせうじ【生じ】もと
より五月下じゆんの
これ【ママ=ころカ】なれば
しかをよせる
ひぐし【注】かと
思ふほとのたい
まつをとぼし
大いそ小いそまでをとひ【飛び】
あるきけるこのけものに
なじみたるとらなども
人をなやませしとなんけものゝすみしところを
そが中むらといへり
【注:火串「ほぐし」=火をつけた松明を挟んで地に立てる木。夏の夜これに鹿などが近寄るのを待って射取る】
【左丁】
景清両眼(かげきよりやうがん)の怪(くはい)
へいけすど【数度】のかつせんにうちまけ
みかたこと〴〵くさんらんしてかい
ちうへしづみ又は
いけどら
るゝも
ありし
その
中に
七兵へ【注1】
かげ
きよ
はひう
がのくにへ
みをかくしりやうがんを
ぬいてきよみづくはんおん
におさめけるさるほど
にかげきよのりやうがん
げんじにうらみのこりよな〳〵
とうをはなれてらくちうを
とびあるきぬ
〽だんのうらにてみほのや【美尾谷】との
しころひき【錣引き=注2】にことのこりてや
ふたつのまなこ人のゑりをねらいし
ゆへゑりもとがぞつとしたら
ゆだんをするなとらくちうのものいゝつたふ
【注1:景清は悪七兵衛景清と言われた】
【注2:屋島の戦いで、平景清と源氏方の美尾谷 (みおのや) 十郎国俊が格闘し、景清がつかんだ国俊の兜の錏が切れたという伝説。】