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兵(へい)の多(おほ)からん時(とき)に。其手当(そのてあて)となさんためとこそ知(り)られたり。
秀吉公(ひでよしこう)筑紫(つくし)御進発(ごしんばつ)の事(こと)
今年(ことし)文禄元壬辰年(ふんろくくわんみづのへたつどし)三月には。秀吉公(ひでよしこう)肥前(ひぜん)名護屋(なごや)へおもむき給ふよしに
相極(あひきはま)る。すでに去年(きよねん)より彼所(かしこ)御狩屋(おんかりや)の普請(ふしん)等(とう)を。近習(きんじゆ)外様(とざま)の差別(さべつ)なく
一所(いつしよ)〳〵を分(わか)つて。其(その)もよりよき大名(たいみやう)小名(せうみやう)に仰付(おふせつけ)られしかば。大勢(おほぜい)の人数(にんす)を
以(もつ)て本丸(ほんまる)二の丸(まる)。楼門(ろうもん)矢倉(やくら)は申(まう)すに及(およ)ばず。奥(おく)の局(つぼね)に山里(やまさと)の数寄屋(すきや)築山(つきやま)
遣水(やりみつ)所々(しよ〳〵)の番所(ばんしよ)まで木石(ぼくせき)を撰(えら)み工匠(くしよう)を揃(そろ)へて奇羅(きら)をみがける間所(まどころ)。大小
五六十 処(しよ)の造作(ざうさく)を数月(すげつ)も経(へ)ざるに出来(しゆつたい)せしかば。分別(ふんべつ)なき者(もの)とも云(いひ)けるは
是(これ)ひとへに。太閤(たいこう)の御器量(ごきりやう)の広(ひろ)きと又(また)御威風(ごいふう)の強(つよ)きをもつて。流石(さすが)武功(ぶこう)の人々(ひと〴〵)
まて畏(おそ)れ仰(あほ)ぐがゆゑにより。何事(なにごと)にもあれ御 ̄ン意(こゝろ)に叶(かな)わぬ事(こと)のなきを見(み)よと。