翻刻
肝胆(かんたん)の木(もく)気(き)伸(のび)ん事を欲(ほつ)するものは。本艸(ほんさう)に所謂(いはゆる)
木鬱(もくうつ)の症(しやう)なり。気(き)は木(き)にして。其(その)色(いろ)黄(き)なるをもて
敷初(しきそめ)の蕎麦切(そばきり)に。うどんげの花を咲(さか)せ。初道中(はつだうちう)の酒(さけ)ひた
しに浮木(うきゝ)の亀(かめ)の齢(よはひ)をのぶる。延紙(のへがみ)の一筆には。一枝(いつし)を伐の
木性(きしやう)顕(あらは)し遠(とを)く連理(れんり)の末(すへ)を契(ちぎ)る。何ぞ木さしに
あらすと謂(いふ)ふべけんや。是(この)故(ゆへ)に木(き)息子(むすこ)あれは木娘(きむすめ)あり。木(ぼく)
訥(とつ)は仁(じん)に近(ちか)しと。其木(そのき)を断(きつ)て此(こゝ)に投出(なげいだ)す事しかり
寛政七乙卯春 十遍舎一九誌