翻刻
【右丁】
皆古来《振り仮名:俗間| |セケン》言伝ふる語に随(シタカ)ひ今みたりに改(アラタ)めす
読む人意を以て文を儌(モト)め其 雅馴(カジン)ならさるを咎(トガ)むる事なかれ
一 蚕室(カイコヤ)は狭(セマ)きより広(ヒロ)きをよしとす家の向東西に
よらす後(ウシロ)の方へ開き戸を付へし暖を凌(シノ)く用心也
広き処は気こもらぬ故火少々用ひ袷(アワセ)半てん重(カサ)
ね着(キ)にて快(コヽロヨ)きほとにいたし養(ヤシナウ)へしさする時は蚕
性つよく育(ソタ)ちて手入 行届(ユキトヽ)くものなり又 狭(セマ)き所に
て養には火は朝のみ少々用ひて天井五六尺四方も
開き室❓気の洩(モレ)やうにすへし猶戸 障子(しやうし)も時々開て
風を入へし若(モシ)其家不相応人 数(す)多けれは天井何程
【左丁】
開ても火の用処も多く且朝夕の炊(カシ)き煙り天井
の開口より下りて却て気籠る事もありそれを払(ハフフ)
には 風も厭(イト)はす戸障子開へし若其 儘(マヽ)気を
付されは後必す病を《振り仮名:醸|カモ|デカ》す也其蚕へは何程手
を尽(ツク)し養とも上作する事なし縦今一起の中
はき蚕なりとも舟か庭に至り後れ蚕又はちへさ
なる蚕又は頭大にして透(スキ)たる蚕等出る也何れも
桑付三日の頃にいたり並(ナミ)より太(ふと)りなから却て桑
□に□りて斃(タヲ)れ死す左なくは揚(アケ)て後(ノチ)尽(コト〳〵)くくさる也
是皆暖にて気籠るより病起る故蚕室は二□□