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前は七十余日、寒酒(かんしゆ)八九十日にして酒をあくるなり、尤(もつとも)年の寒暖(かんだん)に
よりて、増減駆引(そうけんかけひき)日 数(かず)の考(かんがへ)あること専用(せんよう)なりとぞ○但(たゞ)し昔(むかし)は新(しん)
酒の前にボタイといふ製(せい)ありてこれを新酒とも云(いひ)けり、今に山家(やまか)
は此製 而巳(のみ)なり、大坂などとてもむかしは上酒は賤民(せんみん)の飲物(のみもの)にあら
ず、たま〳〵嗜(たし)むものは、其家にかのボタイ酒(しゆ)を醸(かも)せしことにあり
しを、今治世二百年に及(およ)んて纔(わづか)其 日限(ひかきり)りに暮(くら)す者(もの)とても、飽(あく)まで
飲楽(いんらく)して陋巷(ろうこう)に手(て)を撃(う)ち萬歳(まんせい)を唱(とのふ)、今其時にあひぬる有難(ありがた)
さを、おもはずんばあるべからす
米(こめ)
□【注】米(もとまい)は地廻(ちまは)りの古米(こまい)、加賀(かが)、姫路(ひめぢ)、淡路(あわぢ)、等(とう)を用(もち)ゆ、酘米(そへまい)は北国(ほつこく)古米、第
一にて、秋田(あきた)、加賀(かが)、等(とう)をよしとす、寒前(かんまへ)よりの元(もと)は、高槻(たかつき)、納米(なやまい)、淀(よと)、山方(やまかた)の
新穀(しんこく)を用(もち)ゆ
【注 酉+胎】