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翻刻
切抜(きりぬ)き十町廿町の道(みち)をなす。採工(げざい)松明(たいまつ)を照(てら)しぬれば穴中(けつちう)真黒(まつくろ)にして石共
土(つち)とも分(わか)ちがたく採工(げざい)も常(つね)の人色(にんしよく)とは異(こと)なり。かく堀入(ほりいる)ことを如何(いかん)となれば。
元(もと)此石(このいし)には皮(かわ)ありて至(いたつ)て硬(かた)し。是(これ)今(いま)ねぶ川(かは)と号(なづけ)て出(いだ)す物(もの)にて《割書:本ねぶ川|は伊予(いよ)也》矢(や)を
入(い)れ破取(わりとる)にまかせず。たゞ幾重(いくへ)にも片(へ)ぎわるのみなり。流布(るふ)の豊島石(てしまいし)は其
石の実(み)なり。故(かるがゆへ)に皮(かわ)を除(よけ)て堀入る事しかり。中(なか)にも家(いへ)の浦(うら)には敷穴(しきあな)七ツ有(あり)。
されども一山(いつさん)を越(こ)えて帰(かへ)る所(ところ)なれば器物(きぶつ)の大抵(たいてい)を山中(さんちう)に製(せい)して担(になひ)出(いだ)せり
水筒(ゐつゝ)。水走(みつはしり)。火炉(くはろ)。一ツ竈(へつい)などの類(るい)にて。格別(かくべつ)大(おほい)なる物はなし。かう村は漁村(ぎよそん)なれ
ども石もかろうとの南(みなみ)より堀出(ほりいだ)す。石工(せきこう)は山下に群居(くんきよ)す。但(たゞ)し讃州(さんしう)の山(やま)は悉(こと〴〵)く
此石のみにて。弥谷(いやたに)善通寺大師(ぜんつうじだいし)の岩窟(いわや)も此石にて造(つく)れり
○石理(いしめ)は 磊落(いしくず)のあつまり凝(こり)たるがことし。浮石(かるいし)に似(に)て石理(いしめ)麤(あらき)なり。故(ゆへに)水盥(みづたらい)
などに製(せい)しては。水漏(みつも)りて保(たもつ)ことなし。されども火に触(ふれ)ては損壊(そんくわい)せず。下野(しもつけ)宇(う)
都宮(つのみや)に出(いた)せるもの此石(このいし)に似て。少(すこ)しは美(び)なり。浮石(かるいし)は海中(かいちう)の沫(あは)の化(け)したる
物(もの)にて伊予(いよ)。薩摩(さつま)。紀州(きしう)。相模(さがみ)に産(さん)すされば此山も海中(かいちう)の島山(しまやま)なれば開(かい)