翻刻
【右丁】
大城(たいしやう)に接近(せつきん)す《割書:是(これ)乃(すなはち)比々谷(ひゝや)に|ありし時(とき)の事也》依(よつ)て今(いま)の地(ち)に移(うつ)され大(おほい)に資材(しさい)を
喜捨(きしや)し殿堂(てんたう)房室(ほうしつ)に至(いた)るまて悉(こと〳〵)く営建(えいこん)し給ひ最(もつとも)宏壮(こうさう)の大梵(たいほん)
刹(せつ)となる《割書:事跡合考(しせきかふかう)に慶長(けいちやう)十年乙巳/本堂(ほんたう)|回廊等(くわいらうとう)御造営(こさうえい)ありて大伽藍(たいからん)となる云々》於是(これにおいて)浄家(しやうけ)の宗教(しゆうきやう)一時(いちし)に
勃興(ほつこう)し念佛(ねんふつ)の聲(こゑ)天下に洋々(やう〳〵)たり《割書:以上/浄宗護国篇(しやうしうここくへん) ̄ニ出たり慶長(けいちやう)十年|一朝(いつてう)門前(もんせん)の老翁(らうおう)師(し)に謂(いつ)て云く》
《割書:今夜(こんや)祥夢(しやうむ)を感(かん)す師(し)微笑(ひしやう)して云く你(なんち)其(その)夢(ゆめ)を鬻(ひさ)け吾(われ)買(かは)んとて青銅(せいとう)二十|疋(ひき)を畀(あた)ふ既(すて)にして翁(おきな)云く増上寺(そうしやうし)軒端(のきは)の垂木(たるき)繁(しけ)るらん師曰(しいは)く吉徴(きつちやう)なり慎(つゝしみ)て》
《割書:人に語(かた)ることなかれと果(はた)して翌日(よくしつ)伽藍(からん)営復(えいふく)の命(めい)ありて竟(つひ)に宏構(こうこう)鉅材(きよさい)天下の|壮観(さうくわん)となれる由(よし)浄土高僧傳(しやうとかうそうてん)に出(いて)たり》
抑(そも〳〵)當山(たうさん)は関東(くわんとう)浄刹(しやうせつ)の冠首(くわんしゆ)にして龍象(りうさう)の聚(あつま)る所(ところ)實(しつ)に霊山(りやうせん)
會上布金紺園(ゑしやうふきんこんえん)にも比(ひ)すへけん数百戸(すひやくこ)の学寮(かくりやう)は畳々(ちやう〳〵)として
軒端(のきは)を輾(きし)り支院(しゐん)は三十/餘宇(よう)靡々(ひゝ)として甍(いらか)を連(つらね)たり三千
餘(よ)の大衆(たいしゆ)は常(つね)にこゝに集(あつま)る中(なか)にも能化(のうけ)は一代(いちたい)の法蔵(ほふさう)を胸間(きやうかん)に
貯(たくは)へ所化(しよけ)は十二の教文(きやうもん)を眼裡(かんり)に晒(さら)せり三心即一(さんしんそくいつ)の窓(まと)の前(まへ)
には五念四修(こねんししゆ)の月(つき)を弄(もてあそ)ひ事理俱頓(しりくとん)の林(はやし)の中には実報受(しつほうしゆ)
用(よう)の花(はな)を詠(えい)す佛閣(ふつかく)の荘麗(さうれい)【壮】たる七宝荘厳(しつほうしゃうこん)の浄土(しやうと)も又/此(こゝ)を
【左丁】
去(さ)る事(こと)遠(とほ)からすとそ思(おも)はれける
御忌参(きよきまゐり)《割書:正月|廿五日》涅槃會(ねはんゑ)《割書:二月|十五日》誕生會(たんしやうゑ)《割書:四月|八日》開山忌(かいさんき)《割書:七月十八日に修行(しゆきやう)す一山/惣出仕(さうしゅつし)並に|近在(きんさい)の末寺(まつし)より出て大法會(たいはうゑ)を修(しゆ)す》
十夜法會(しふやほふゑ)《割書:十月六日より同十|五日迄/修行(しゆきやう)す》
飯倉神明宮(いひくらしんめいくう)同/東(ひかし)の方/神明(しんめい)町にあり《割書:江戸名所記(えとめいしよき)等(とう)に日比谷神明(ひゝやしんめい)と|あり今(いま)俗間(そくかん)芝神明(しはしんめい)と称(しよう)す》
其(その)舊地(きうち)は増上寺(そうしやうし)境内(けいたい)飯倉天神(いひくらてんしん)の社地(しやち)なりと或(あるひは)云(いふ)赤羽(あかはね)の南(みなみ)小(こ)
山神明宮(やましんめいくう)の地(ち)なりとも社司(しやし)は西東氏(さいとううち)《割書:名所記(めいしよき)に往古(わうこ)當社(たうしや)の神(かみ)|託宣(たくせん)ありしにより相州(さうしう)》
《割書:足柄郡(あしからこほり)より斎藤氏(さいとううち)なる|人を招(まねき)て神主(かんぬし)とすと云々》別當(へつたう)は金剛院(こんかうゐん)と号(かう)す其(その)餘(よ)社家(しやけ)巫女(ふちよ)等あり
神鳳抄云 武蔵國飯倉御厨 當時四貫文
同書又曰 飯倉御厨 長日 御幣五十丁
東鑑曰 寿永三年甲辰五月三日庚寅武衛被奉
寄附両村於二所大神宮去永暦元年二月御出
京之刻感霊夢之後當宮事御信仰異他社然者
平家党類等在伊勢國之由依令風聞遣軍士之
時者縦雖為凶賊之在所不相触事之由於祠宮
無左右不可乱入神明御鎮座砌之旨度々所被
仰含也謂件両所者内宮御分武蔵國飯倉御厨
被仰付當宮一祢宜荒木田成長神主外宮御分