翻刻
【右丁】
伊皿子(いさらこ)
薬師堂(やくしたう)
【図】
【枠内】本堂
【左丁】
牛小屋(うしこや) 牛町(うしまち)にあり《割書:延宝江戸図(えんはうえとつ)に此地(このち)を|牛(うし)の尻(しり)と云(いふ)とあり》牛(うし)を畜(きう)する家(いへ)多(おほ)く牛(うし)の数(かす)
一千疋(いつせんひき)に餘(あま)れり養(やしな)ふ処(ところ)の牛(うし)額(ひたひ)小(ちひさ)く其(その)角(つの)後(うしろ)に靡(なひ)きたるを藪(やふ)
覆(くゝり)と号(なつ)けて上品(しやうひん)なり都(すへ)て牛(うし)は行事(ゆくこと)正(たゝ)しく殊(こと)に早(はや)し形(かたち)婉(たをやか)に
して精氣(せいき)撓(たわま)す力量(りきりやう)勝(すくれ)たるに軛(くひき)をかけ重(おもき)を乗(の)せて遠(とほ)きに
運(はこ)ふ人(ひと)の用(よう)を助(たすく)る事(こと)其功(そのこう)誠(まこと)に少(すくな)からす古(いにしへ)は淀(よと)鳥羽(とは)にのみ
ありて都(みやこ)の外(ほか)には牛車(うしくるま)なかりしに御入國の頃(ころ)より許宥(きよいう)
ありて江府(こうふ)にも是(これ)を用(もち)ゆる事となれり餘(よ)は駿河(するか)にあるのみ
にて唯(たゝ)此(この)《振り仮名:三ヶ所|さんかしよ》に限(かき)れりとそ
高輪大木戸(たかなわおほきと) 宝永(はうえい)七年庚寅/新(あらた)に海道(かいたう)の左右(さいう)に石垣(いしかき)を築(きつか)せ
られ高札場(かうさつは)となし給ふ《割書:其(その)初(はしめ)は同所(とうしよ)田町(たまち)四丁目の三辻(みつゝち)に|ありし故(ゆゑ)に今(いま)も彼地(かのち)を元札(もとふた)の辻(つち)と唱(とな)ふ》此地(このち)は
江戸(えと)の喉口(こうこう)なればなり《割書:田町(たまち)より品川(しなかは)迄(まて)の|間(あひた)にして海岸(かいかん)なり》七軒(しちけん)と云(いふ)辺(へん)は酒旗(しゆき)肉(にく)
肆(し)海亭(かいてい)をまうけたれは京登(きやうのほ)り東下(あつまくた)り伊勢参宮(いせさんくう)等(とう)の旅(りよ)
人(しん)を餞(おく)り迎(むか)ふるとて来(き)ぬる輩(ともから)こゝに宴(えん)を催(もよほ)し常(つね)に繁(はん)