翻刻
や姫いはくこはたかになのたまひそ屋の上に
おる人共のきくにいとまさなしいますかりつる
心さしともを思ひもしらて罷なんする事の
口おしう侍りけりなかきちきりのなかりけれは
程なく死ぬへきなめりと思ひかなしく侍る也
親達のかへりみをいさゝかたにつかうまつらて
まからん道もやすくも有ましきに日頃も出ゐ
てことし計のいとまを申つれとさらにゆる
されぬによりてなんかく思ひなけき侍る御心
をのみまとはしてさりなん事のかなしくたへ
かたく侍也かの都の人はいとけうらにおひをせ
すなん思ふ事もなく侍るなりさる所へまか
らんするもいみしく侍らす老おとろへ給へる
さまを見奉らさらむ事こひしからめといひて
おきなむねいたき事なし給ふそうるはしきす
かたしたる使にもさはらしとねたみおりかゝる
程によひ打過てねのこく計に家のあたりひる
のあかさにもすきてひかりたりもち月のあか
さを十あはせたる計にて有人の毛のあなさへ
見ゆる程なり大空より人雲にのりておりき
て土より五尺はかりあかりたる程にたちつらね
たり内外なる人の心とも物におそはるゝやう