翻刻
小夜時雨 小倉山といふ楓の実生にて
葉形よく似てよいさく【注】きり
まはしもきれゐに春のいろ
【挿絵】 青し葉も厚くよし秋の
黄と紅ましりいろ〳〵
なる事たくいなし
衣笠前内大臣
此さとはいつしくれけん小倉やま
ほかに色見ぬ峰の紅葉々
【注 別本は「よいさく」が「ちいさく」】
ひとしほ 葉形切《見せ消ち:込|入》すかしありて小きさみ
あり嵐山といふ楓に紛るゝ
計り似て春の出は薄柿色
【挿絵】 のみ事なるにて嵐山と
異あり夏の頃うす色と
なり秋又さき〳〵に紅葉せり 左大臣
そめまさる色こそ見ゆれはゝそ原
けさのしくれのあとのひとしほ