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翻刻
書を返へされたりし又云へるあり曰く春嶽公人に語て云ク
予田安の館より当家の養子と成りし時年甫て十一歳
なりし或日雪江予に告て曰く若は民の父母にして民ハ
君の赤子なれハ願くハ之を虐け之を欺むくこと勿れ事
ハ志に因て成る者なれハ志の一字ハ常に忘るゝ事勿れ上は
幕府へ忠節を尽し下は一国を治め衆庶【?】をして安か
らしむるこそ国君の職務なりと其言温にして其事甚だ
厳なり今に於て耳尚欹つ爾後予を補翼すること始
終一の如しヘルリが初て内海に来るや世論洵々【恂恂】たり当
時予も亦鎖港論なりしに雪江が擬答の一書能く
予提携すと謂ふへし雪江二十年前にして既に眼を全地
球上に上に開き蚤く【はやく】今日を洞見したる事正に是の如し
重く朝廷の抜擢を蒙むるも又宜【うべ】なり是予が面目となし
敢て雪江の為に誇言するなりと云云以上名誉新誌記載
する所信偽固より保せすす【衍】と雖とも今翁の小伝を畢るに
臨ミ暫く之を抜萃して其一分を補ふ