デジタルアーカイブ福井の資料を翻刻

コレクション: 松平文庫

温古集 三巻 - 翻刻

温古集 三巻 - ページ 32

ページ: 32

翻刻

する文中に記して云へるあり曰く嘉永六年癸丑六月亜米 利使節へルリ其国大統領の書簡を齎らし来りて和 親貿易を請ふ時に幕府其齎らす所の国書を諸侯 に示し各自の異見を問ふ時に諸侯伯開港を是と する者少き概ね皆鎖港攘夷の論にして物情騒然たり 君《割書:翁を|さす》或日春嶽公の前に伏して曰臣倩々世の形勢を 見るに今や国家艱難の時に際し禍ひ爰に萌芽せり 天下皆消壌を主張して其勢ひ実に止むべからす臣 の見ハ甚だこれと異なり依て誠に我皇帝陛下より 米国大統領に答る書読に擬する一篇を草せり是臣 の志の存する処願くハ一覧を賜へとて懐より一書を差出し ける其書の略に曰く時に亜米利加大統領の請求に応じ 我国に三港を開くへし欧州格国へハ米国より是を通報 し皆来りて貿易そ為さしむへし今鎖国を変して開港を 許すに於てハ互に信義を以て交際を厚くし貿易を盛ニ し欧米諸州と往来し我よりも公使を各国へ飲差すべし と云々これ其大意にして其他の件々何れも開明の説なら さるは莫き公閲し終り冊を掩ひ沈思すること良【やや】久しく 莞爾として曰く汝これを舎ㇽ今日の勢ひ如此慎んて 世の嫌疑に触るゝ事なかれ速に之を火に投せよといふて其