翻刻
【右丁】
千才の神と大己貴命を崇め奉れは此謂にて外の事を
いふ儀にはあらす但し宝は田力(タチカラ)と云略にして其 田(タ)。力(チカラ)は
米也然れは米は宝の最上にて則宝の中にて米は惣
体の君也金銀は其君に使はるゝ奴にて宝の使に世の中へ
ありく役也今も銭を御足しといふは米の使ひといふ義理也
扨世の中之金銀は元皆上の御品なり然るに工手間商人
交易の骨折の料に米を賜はるは勿論なれど其米も
各其年の食料に満れは金銀を米の価に割付て夫々
渡し方になりしが初にて追々金銀の弁理が世の融通
となりたる也然れとも金銀が下々の手に止るといふに
【左丁】
はあらす年々 上より米を出して其金銀を引
上け給へば工商の徒は米金に遣はれて妻子を扶助し
其日々を暮す義なれは金銀の往来する而已にて少
しも宿に止るといふ訳に者決て至らざるなり故に
工商は世話敷して貧也士農は豊かにして富るは彼
命の根なる米を押へるの徳ある故也其は福神大己
貴命之米俵を踏み給へる処にて其由現然たる也爰
を以て考ふるに往古砂金通用折は勿論近く大坂御
治世の折にても金銀を数多貯ふは士農に限りて工
商に富るは稀也其は米金等分之位なれは何れにも商