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【右頁】
甚た害あるを以ての故なり
伊勿令(イウリン)《割書:人|名》云此頃種痘法を施せし者百八十二人あり此内
に死せりもの唯二人なり餘は悉く安穏にして功を得たり
又/麻土爾(マトル)《割書:人|名》云種痘せし者凡三百人ありて死する者五人
其死せし所以を考ふるに皆痘のために死するにあらず
他病起りて斃れたる者なり
此三百人の中には七十歳になりし人もあり又妊婦も
ありたれとも皆安穏なりと予熟考ふるに高年の人には
不宜と思はる二十歳以下の人に施用するを佳とすべし
流行の痘を患る人を二三年の間に其死生の数を平均
するに或は九人に一人或は十人に一人或は十一人に一人
【左頁】
必死せしなり種痘する者は九十人の中に死せし者
唯一人ありと其利害の數如此の相違あるを以て種痘
に益ある事信せずは有へからず若種痘に因て其痘
數の多く發する者は爾後必壮健になるなり此人にて
流行の痘を得るときは必す死すへきの大毒ある事
察すべし故に此法を施す時は人命を救活すれの
功豈すくなからんや
麻土爾(マトル)又云流行痘にて死する者の數を尚再ひ筭ふるに
五人の内に一人あり種痘せし者は一人も死せし事
なし又/白耳禄土帷尓立牙木(フルロクトウイルリヤム)《割書:人|名》の説に云此法にては
■人も死する事なく固より再ひ痘を病むの理なし