翻刻
余を与(あた)へよさらは自(みつから)国にて所々江流し捨られし苦を受て学(まな)ぶべし汝が為に恩を報ずる事成へし又御 夢想(むそう)を蒙り夜も明ぬれば急ぎ棺■の蓋(ふた)を開きみれは有し姫君の骸(かひだ)と■消て骨肉も云〳〵小虫と成て有けれは夫婦見奉りて再(ふたゝ)び出生し給ふとて御歓は限りなし去レ共食物を参らせんにも穀の類是を食せす小虫の■
なれは何を以養ふべし子細をしらず太夫いかんと案しけれは此姫君
異国の人にてましませば巨細(こさい)をしらず姫宮の御国■
桑の木あればこそ彼舟をも造り■ると覚へたり国の木なれは其虫/縁(ゆかり)もあり食されもやせんとて彼 虫等(むしたち)の中江■へ給へば歓(よろこ)んで桑の云ふに取付食し給ふ也去しは古郷の木■てあれば恋しく思し召るゝぞやと桑を参らせけれは次第に成長し給ふ也 殊(こと)に奇特(きとく)ある此虫■■桑をも参らず動きもせず皆々頭を一様に上げて華々くしたる躰也夫婦も是は如何あるやらんと云に其身の夢に告て日相構て騒く事なかれ我国にて獅子吼山鷹群山海岸山江流されし苦しみの堪難(たへがた)きに今休に悩(なや)む也ヶ様にする事四戸□□□□時一々語りし其所の苦を受て悩むへし其後空穂船に乗たる迄我為にすべしとて夢は覚にけり扨こそ蚕を養ふに一ツの休みを獅子の休と名付二番の休を鷹の休三番の休を船の休と唱ふ其後
庭の休也此四つの留りは獅子吼山鷹群山海岸山内裏の庭江埋(うづ)められ給ふを庭上留り一大事也只能々誠心して不浄を忌(いむ)べし後/繭(まゆ)を作る事は空穂舟に乗りしを学れつる也其頃筑波山の瓢道仏人此繭を以糸綿といふ