翻刻
【右丁】
一説 慎火樹(しんくはしゆ)《割書:弘|景》 きりんかく イホウエホウエ《割書:荷|蘭》
竜骨木(りうこつほく)《割書:桂海草|木志》 覇王鞭(はわうへん)《割書:花暦|百詠》 火秧(くわわう)《割書:広東|新語》
南方(なんはう)熱国(ねつこく)の地(ち)に産(さん)す近頃(ちかころ)本邦(ほんはう)へ渡り人家に多(おほ)く栽ゆ甚(はなはた)寒(かん)
を恐(おそ)る故(ゆへ)に冬月(ふゆ)は窯(むろ)【窩室窖ヵ】中に蔵(をさ)む幹(みき)に五稜(いつかと)ありてねじれ芒剌(とけ)【刺ヵ】
あり深緑色(こきみとりいろ)にして形(かたち)角(つの)の如(こと)く又 骨(ほね)の如(こと)し梢(こすへ)に葉(は)あり景天(けいてん)《割書:へんけ|いさう》
に似(に)たり葉(は)を摘(つめ)は白汁(しろきしる)出(いつ)春月(はる)葉間(はのあいた)に二分 許(はか)りの花(はな)あり四
弁 厚(あつ)くして紫黒色(むらさきくろいろ)なり弘景(こうけい)曰(いわく)広州城外(くわうしうしやうくわい)《振り仮名:有_二 一樹_一|いちしゆあり》大(おほきさ)三四囲(さんしい)
《振り仮名:名_二慎火樹_一|しんくはしゆとなつく》馬志嶺(はしれい)表人言従(ひやうしんのことによつて)謬言(れうれん)【注①】《振り仮名:非_二陶氏語_一|とうしのこにあらす》となせり然(しかれ)とも
【左丁】
広東新語(かんとうしんこ)の慎火(しんくは)一名 戒火(かいくは)其形(そのかたち)《振り仮名:如_二火始燃_一|ひのはしめてもゆるかことし》《振り仮名:名_二火秧_一|くわわうとなつく》扁者(ひらたきもの)
《振り仮名:不_レ枝|ゑたあらす》《振り仮名:不_レ華|はなあらす》円者(まるきもの)《振り仮名:多_二枝葉_一|しやうおほく》叢生(さうせい)《振り仮名:成_レ樹|しゆをなす》四稜(しれう)《振り仮名:有_二芒剌_一|はうしあり》【刺ヵ】皮中(ひちう)《振り仮名:有_二白|はくしやう》
《振り仮名:漿_一|あり》《割書:扁者と云は覇王樹を説也|円者と云は竜骨木を説也》又 物理小識(ふつりせうし[き脱ヵ])に覇王鞭(はわうへん)《振り仮名:有_レ剌|しあり》【刺】《振り仮名:非【作】_レ籬|りとなす》【注②】
断汁(たんしう)甚濃(はなはたこし)又(また)桂海草木志(けいかいさうもくし)に竜骨木(りうこつほく)色(いろ)翠青(すいせい)状(かたち)《振り仮名:如_二枯骨_一|ここつのことく》又
花暦百詠(くはれきひやくゑい)に覇王樹(はわうしゆ)一種(いつしゆ)方長(ほうてう)《振り仮名:類_レ鉤者|こうにるいするもの》《振り仮名:号_二覇王鞭_一|はわうへんとなつく》と云(い)へり
諸説(しよせつ)皆(みな)きりんかくなり然(しか)れとも大戟(たいけき)《割書:たかと|うたい》の類(るい)にして景天(けいてん)《割書:へんけ|いさう》の
属(たち[く]ひ)にあらず其(その)同名(とうめい)あるに因(よつ)て此条(このしやう)に混入(こんにう)す弘景(こうけい)か説(せつ)に盆盛(ほんにもりて)
《振り仮名:養_二屋上_一|をくしやうにやしなふ》云《振り仮名:可_レ辟_レ火|ひをさくへし》と云 物(もの)は景天(けいてん)《割書:へんけ|いさう》を指(さす)なり
一種 せきかゞく
枝幹(しかん)扁(ひらた)くして仏掌薯(ふつしやうしよ)《割書:つくね|いも》の形(かたち)をなす物
【版心の中央部】
きりんかく
【注① 「謬」のルビは「ひう」ヵ。「翏」の読みは「れう」。「言」のルビは「けん」ヵ。】
【注② 注記「刺」「作」は京都大学貴重資料デジタルアーカイブの『物理小識 12巻首1巻』(明) 宓山愚者智集 ; (清) 于藻重訂(レコードID:RB00028771)コマ319 右丁 八行九~十九字目で確認。但し、引用文では四字目の「有」が確認資料では文頭に有。】
【十三行下から二字目「扁」の下に一点を消したような跡有】
【十四行十五字目「稜」のルビ「れ」は別の字の上から書いたように見える】