翻刻
【枠内】薩摩守(さつまのかみ)平忠度(たいらのたゞのり)
寿永(じゆゑい)三年七月二五日/平家(へいけ)の
人々 都(みやこ)を落(おち)たまふにより忠度(ただのり)
も都(みやこ)を出(いで)られしが道(みち)より
引(ひき)かへし五/條(でう)の三/位(み)俊成卿(しゆんぜいきやう)の
家(いえ)に行(ゆき)具足(ぐそく)の引合(ひきあはせ)より
巻物(まきもの)一/軸(ぢく)取出し
千載集(せんざいしう)をえらひ
たまはゞ此/巻(まき)物の
内/一首(いつしゆ)なりとも
御おんかうふり
たきよし歎(なげ)き
申されける
其後(そののち)世(よ)静(しづ)
まり千載集(せんざいしう)を
【左帖上部】
撰(せん)ぜられける時(とき)
かの巻(まき)物の内に
左(さ)りぬべき哥(うた)
いくらもあり
けれども
勅勘(ちよくかん)の
人なれ
ば
名字(みやうじ)を
かくして
たゞ一首(いつしゆ)ぞ
入られしが
よみびと
しらずと
かゝれたり
【左帖下部】
故郷(こきやう)の花(はな)といへる
心をよめる
さゞ波(なき)や志賀(しが)の
都(みやこ)はあれ
にしを
むかし
ながら
の
山桜(やまざくら)
かな