翻刻
異国物語上
日本国(につほんこく)則(すなはち)和国(わこく)なり。新羅国(しんらこく)の東南(たつみ)大 海(かひ)のうちに有。
山嶋(さんとう)【「嶋」の左側に「しま」と傍訓】によつてすみかとす。この国九百 余里(より)。もつは
ら武勇(ぶゆう)をこのみ。中国にしたがわず。国をおかし。
うばはんとす。此ゆへに中国是をおそれて常(つね)に
倭寇(わたい)名づく。又は神国(しんこく)と云(いひ)。天神(てんじん)七 代(だい)地神(ぢじん)五代
より。人 王(わう)の今(いま)にいたり。まつり事たゞしく。儒(しゆ)。釈(しやく)。
道(どう)。詩哥(しいか)。管弦(くわんげん)。文武(ぶんふ)。医薬(いやく)。其 道(みち)をまなび。上下 万(ばん)
民(みん)。まことをさきとし。国の制度(せいと)明(あきらか)なり。しかあれ
ば。四海(しかい)【左側に「よつのうみ」と傍記】をだやかに。諸(しよ)国【左側に「もろ〳〵のくに」と傍訓】にすぐれたり。是に
より。万国(はんこく)。日本にしたがわすといふことなし