翻刻
づかへの、むかしわすれぬたしなみよく、 音(おと)なふも
のとては、タゞスウ〳〵ト鼻(はな)いきのあらきのみにて、
目(め)をふさぎ、 一(いつ)しんふらんによがりければ、男もつゞ
けてきをゆりしまい、 〽(げん)まことにうれしうございます
といへば、 〽(ふぢ)わたしもモウどんなにうれしからう、おまへモウ
うわきをだして、わたしヲわすれておくれでないヨ、
間(ま)のいゝことアいくらもあるから、その時(とき)アなんにも
いはずに、わたしがするとをりになツておいでヨ、《割書: |モウ〳〵〳〵》
アヽよかツた、いつまでもわすれられねヘト、〇(おもいれ)のとこ
ろに、《割書:となりの二階(にかい)にて| ひくめりやす》〽(もんく)いつまでぐさの、いつまでも、な
まなかまみへものおもふ、たとへせかれて、ぼゝふるとて
も、」ヲヽそうじや、〽あひみての後(のち)のこゝろにくらぶれば
むかしはものをおもはざりけり、アヽなにごとも、
こゝろにまかせぬは、 世(よ)のならひ、またもあひたい
したいのも、なんのいんぐわデ、このやうにあらう
ぞトいふヲ、 〽(げん)わたしもおなじむねのうちあけて